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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~


キャッシュレス決済がすっかり一般的になり、最近では「現金でのお支払いはご遠慮ください」というお店も珍しくなくなってきました。若い世代にとってはごく当たり前の光景かもしれませんが、私たち60代の世代には、やはりまだ「現金を持ち歩くのが普通」という感覚が根強く残っています。


もっとも、私自身もスマートフォンを使っており、LINEも使っていますし、世の中の流れにまったく乗っていないわけではありません。ただ、正直なところ、電子マネー決済にはまだ踏み切れていません。


その大きな理由の一つが、「スマートフォンの操作に手間取ること」です。

最近のスマホはセキュリティの観点から、顔認証や指紋認証が主流です。私のスマホは顔認証ですが、これがなかなか認識してくれないことが多く、特に暗い場所やマスクをつけていると、まったく反応しません。結果として、認証が通らず画面が開かないのでイライラします。たとえば、レジ前でスマホ決済をしようとして、顔認証がうまくいかず、後ろに人が並んでいる中でまごついてしまう――そんな場面を想像するだけで、導入に踏み切れない自分がいます。


さらに最近では、飲食店でも注文をスマホで行う形式が増えてきました。人手不足の影響もあるのでしょうが、ここでも顔認証が通らないと、メニューを見ることも注文することもできず、やはり煩わしさを感じます。


また、注文のためにアプリやLINE登録が必要なお店も多く、たまたま立ち寄っただけのお店で登録を促され、その後何通も案内メッセージが届くという経験もあります。利便性の裏にある“デジタルな距離の近さ”に、少し違和感を覚えるのです。


もちろん、スマートフォンやキャッシュレスの仕組みは便利ですし、セキュリティ対策が重要なのも理解しています。しかし、その利便性を活かすためには、誰もがストレスなく使える設計が必要だと感じます。特に高齢者にとっては、“操作のわかりやすさ”と“手間の少なさ”が導入のカギになるのではないでしょうか。


時代の変化には対応していきたいと思いつつも、やはりこうした場面で立ち止まってしまう。

こんなふうに感じる私は、やはり“おじさん世代”なのでしょうか(笑)

 


 
 

ひと昔前まで「テレビに出る=影響力がある」という図式が当たり前でした。企業や著名人がテレビに登場すれば、その反響は絶大で、売上や知名度に直結するものでした。しかし、いまやその前提は崩れつつあります。


テレビの視聴率は年々下降傾向にあり、雑誌は休刊や廃刊が相次ぎ、発行部数はピーク時の半分以下。新聞もまた部数減が止まりません。長年メディアの王座に君臨してきたテレビも、WEBメディアやSNSの台頭により、影響力の面では徐々に後退しています。


昨年の選挙報道でも、テレビの報道姿勢に疑問を呈する声がSNSで拡散され、テレビ報道そのものへの信頼が揺らぎました。さらに、あるテレビ局での人権意識の欠如が問題視されるなど、メディアの倫理観にも厳しい目が向けられています。


一方で、スマートフォンを手にした若い世代は、もはやテレビや新聞を見ることすらありません。情報源はもっぱらSNSやYouTubeなどのWEB上にあり、それが真実かどうかを深く考えることも少ないようです。この「情報の受け手の変化」は、PRに関わる私たちにとって、無視できない大きな課題です。


もちろん、オールドメディア=悪という話ではありません。テレビや新聞、雑誌には、情報の裏付けを取り、編集責任を持って発信するという大切な役割があります。SNSでは拡散力こそあれ、裏付けのない情報が感情的に広がっていくリスクもあります。


だからこそ、これからのPRでは、メディアの特性をよく理解し、戦略的に使い分けていく必要があります。テレビや新聞は信頼性という強みを生かし、SNSは即時性と拡散力をうまく活用する。その上で、メディアリテラシーを高める啓発や、フェイク情報への一定の規制も議論していくべきでしょう。


ラジオがいまだに根強いファンを持つように、テレビや新聞、雑誌も形を変えながら生き残っていくはずです。大切なのは、それぞれのメディアが自分たちの「らしさ」を再定義し、信頼を取り戻す努力を続けること。そして私たちPRの立場からも、その変化に寄り添いながら、情報の伝え方を進化させていくことだと思います。

 
 

今度の日曜日、5月12日(日)は「母の日」です。毎年恒例のこの行事、PRの現場でも重要な“仕掛けどき”のひとつであることをご存じでしょうか?


これまでのPR講座でもお伝えしてきたように、祝日や記念日など「年に一度」のタイミングは、メディアにとっても“使いやすいネタ”となるため、上手に企画を立てて情報発信をすれば、取材や紹介につながる可能性が高くなります。


たとえば「母の日」。カーネーションを贈るのは定番ですが、そこに“ひと工夫”を加えることで、魅力的なストーリーを生み出すことができます。

以前、私がPRを担当したのは「親子フラワーアレンジメント教室」。子どもでも簡単に作れる花のアレンジメントを母の日に贈る――という体験型イベントを企画したところ、テレビ局が取材に来てくれました。「子どもが手作りの花を贈る」ことで感謝の気持ちがより強く伝わる、というストーリーが、報道側にも“いい話”として響いたのだと思います。


このように、母の日に限らず「記念日」や「季節の行事」に合わせて企画を練ることで、PRはぐっと成功率が高まります。ただし、いくつか注意点があります。


まず、「イベントへの集客」を目的としたPRはタイミングがシビアです。開催当日だけでなく、事前に人を呼び込みたい場合は、メディアPRだけに頼るのではなく、広告など別の手段を組み合わせた方が確実です。


また、せっかく取材されたとしても、その後の商品やサービスの販売に結びつかなければ意味がありません。「母の日限定の商品」として打ち出しつつ、その魅力を知ってもらい、結果的に“母の日以降”の継続的な購買につなげるような導線づくりが重要です。

たとえば、バレンタインデーに知られたチョコブランドが、誕生日や記念日のケーキ需要にもつながるように――記念日PRは“きっかけ”に過ぎません。そこから先を見据えた戦略が求められます。


年に一度の“季節の行事”は、PRにとって絶好のチャンスです。母の日をはじめ、父の日、七夕、敬老の日、ハロウィン、クリスマスなど、年間のイベントカレンダーを眺めながら、どの記念日で自社の商品やサービスをどう打ち出せるか、ぜひ検討してみてください。

 
 

著者・橘川徳夫 プロフィール

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中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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