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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~


今年は9月に東京で世界陸上が開催され、陸上競技が久しぶりに大きな注目を集めました。その盛り上がりを引き継ぐように、10月に入ると駅伝のシーズンが到来し、駅伝ファンにとっては心待ちの季節となりました。

 

駅伝シーズンの幕開けを告げるのは、10月12日に行われた「出雲駅伝」です。続いて10月26日には、大学女子日本一を決める「全日本大学女子駅伝」、そして11月2日には「全日本大学駅伝」と、秋はまさに駅伝三昧の季節です。


わが母校・中央大学は、出雲駅伝で優勝候補とされながらも波に乗れず、結果は10位に終わりました。全日本大学女子駅伝では、1区の出遅れから流れに乗れず上位争いに加わることもないまま18位という実力の差を感じる順位でした。続く全日本大学駅伝では、上位争いを展開しましたが、惜しくも2位となりました。選手が実力を発揮すれば、上位で走れることを証明したことで、箱根駅伝優勝という目標に期待が持てそうです。


駅伝という競技は、単に走力だけで勝敗が決まるものではありません。チームの総合力や現場での判断力、そして選手一人ひとりの精神力など、さまざまな要素が絡み合って結果が出ます。そのため、プレッシャーやレースの流れによって、本来の力を出し切れないこともあります。

だからこそ駅伝は面白いのです。抜きつ抜かれつの展開に手に汗握り、母校の選手が懸命に走る姿に胸が熱くなります。ただ、テレビ観戦となると、上位争いに加わらなければ画面に映る機会がぐっと減ってしまいます。しかし、中位以降のチームだと、襷(たすき)をつなぐ中継所のシーンでしか映らないことも多く、今どのあたりを走っているのかが、中継所に来ないとわからないというもどかしさがあります。(頑張っている選手には本当に申し訳ないのですが……)

 

箱根駅伝のときは、テレビ中継を見ながらスマホとPCを駆使し、現在の順位速報を大まかチェックし、「中大が上がった!」「抜かれた……」と一喜一憂しています。やはり上位争いに加わって、テレビに多く映るようなレースをしてくれると、応援のしがいがあります。

 

ただし、けがや熱中症などによるアクシデントでトラブルがあるとテレビはそのことを当然のことながら中継しています。

確かにこういうトラブルも駅伝のドラマだと思いますが、正直、どの大学の選手であっても、そんなシーンは見たくありません。だからこそ、選手の皆さんには、どうか万全の体調で臨んでもらいたいと思います。


駅伝の醍醐味は、やはり互いに力を出し切って、最後まで競い合うところにあります。その中で見せる全力の走りこそが、観る人の心を打ち、駅伝という競技の魅力を作っているのだと思います。

お正月の箱根駅伝でも、選手たちがベストコンディションで臨み、それぞれの大学の襷を力強くつないでいく姿を期待しています。きっと今年も、テレビの前で「頑張れ、中大!」と声を出しながら、おじさんはリモコン片手に熱くなっていることでしょう。

 

 
 

私が子どもの頃、家にあったのは黒電話でした。いまではスマホが当たり前の時代になり、電話を“かける”よりも“タップする”ほうが主流になりました。

会社に入った頃、ようやくFAXが導入されたばかりで、社内に1台だけ。FAXが届くと、わざわざその部屋まで取りに行く――そんな時代もありました。あの頃はそれが最先端の通信手段だったのです。

やがて携帯電話が登場し、私も比較的早く手に入れました。当時は「そんなもの持ってどうするの?」なんて言われましたが、どこでも話せる便利さは圧倒的でした。そして今はスマホの時代。電話というより、生活を支える“情報端末”になっています。


若い人の家庭では、固定電話を持たないケースがほとんどです。「携帯があるから必要ない」――確かにその通りです。

私が若い頃、家に固定電話を引くというのは、ちょっとしたステータスでした。というのも、固定電話を設置するには申し込みをして工事を待ち、しかも「電話加入権」というものを購入する必要がありました。その加入権が十数万円もしたのですから驚きです。ですから、自分の家に電話を持てるということは、ある意味で“一人前”になった証でもありました。


最近では、会社の代表電話をなくして社員にスマホを支給する企業も増えました。とはいえ、会社にかかってくる電話の多くは営業の売り込みばかりです。中には、代表電話を持たない、あるいはあっても公開しない企業もあります。また、家庭では営業電話や詐欺まがいの電話が増え、受話器を取るのも警戒する時代になりました。


でも、正直に言うと、おじさんとしては少し心配になるのです。

「代表電話がない会社って、本当にちゃんとしているのか?」と。もちろん、時代の流れは理解していますが、固定電話には“安心感”がありました。ちゃんとした場所に会社があり、誰かがきちんと受け答えしてくれる――そんな当たり前のことが、信頼の証でもあったのです。


いまの若い人には、そんな感覚はもう古いのかもしれません。若い世代は電話で話すこと自体が苦手だといいます。スマホは“話す道具”というより、SNSやメッセージアプリでつながる“コミュニケーション端末”。もはや「電話」は“声で話すもの”という定義から離れつつあります。

それでも、おじさん世代にとって固定電話は、ただの通信手段ではなく「会社の顔」であり、「信頼の音」でもありました。とはいえ、現実には固定電話の役割は確実に減っています。スマホやチャットでやり取りができるいま、必要性が薄れていくのも仕方のないことです。


とはいえ、最近では会社にかかってくる電話のほとんどが営業の売り込みばかりです。忙しいときに限って鳴り響くものだから、正直イライラしてしまうこともあります。固定電話の利用がそうした営業電話ばかりになってしまうのであれば、なくなっていくのも仕方がないのかもしれません。

けれど、電話をかける側も、もう少し相手の状況や迷惑を考えてほしいものです。こうしたことが続けば、「固定電話はいらない」と思う人が増え、いずれはどの会社からも固定電話が消えてしまう時代が来るかもしれません。


固定電話の必要性をまだ感じているおじさんとしては、それが少し寂しく感じます。メッセージやスタンプのやり取りも便利ですが、やはり電話の良さは“その場で話せること”にあります。お互いの声を聞きながら、その瞬間に理解し合い、合意できる――そんなリアルなコミュニケーションこそ、電話ならではの魅力だと思うのです。


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~引き出しの多さがPR担当者の実力になる~


PRを仕事にしていると、「PRがうまくいく人は、どんな能力を持っているのか?」という質問をよく受けます。私なりに答えるとすれば、「企画力」と「調整力」――この2つに尽きると思います。

どちらも一朝一夕に身につくものではありませんが、PRという仕事の本質を理解するうえで欠かせない力です。今回はこの2つについてお話ししたいと思います。

 

PRがうまくいくためには、単に情報を発信するだけではなく、「相手の立場に立って、興味を持ってもらう」ことが欠かせません。

しかし、同じことを繰り返していては新鮮味が薄れ、伝わる力も弱くなります。だからこそ必要なのが「企画力」――つまり、新しい考え方や切り口を見つける力です。

しかしながら、企画力は、すぐに身につくものではありません。多様な知識や経験を蓄積しておくことが大切です。幅広い分野の知識があればあるほど、アイデアを組み合わせて新しい企画を生み出すことができます。

逆に、知識が限られていれば、発想も狭くなりがちです。よく「引き出しを増やせ」と言われますが、それは単に知識を増やすだけではなく、自分が経験した成功や失敗を分析し、次に活かせるようにすることでもあります。

実際に行動し、試行錯誤して得た経験は、知識よりも深い“実践的な引き出し”になります。PRの現場では、その「中身の濃い引き出し」がものを言うのです。

 

もう一つの重要な能力が「調整力」です。

PRは一人で完結する仕事ではありません。たとえばPRイベントを実施する場合、主催者・イベント会社・芸能事務所・ゲスト・後援企業・自治体・メディアなど、さまざまな立場の関係者が関わります。

当然、それぞれの立場で意見や要望があります。どこか一方の意見だけを優先してしまうと、他の関係者に不満が残り、結果的に良いPRにはつながりません。

調整力とは、全員にとって納得のいく形を見つける力です。そのためには、相手の話を丁寧に聞き、何を求めているのかを見抜く洞察力も必要になります。

そしてこの調整力もまた、経験と知識の「引き出し」が多ければ多いほど発揮しやすくなります。過去に似たような課題を乗り越えた経験があれば、冷静に着地点を見つけることができるからです。

 

企業のPR担当者であれば、日々の業務を通じて経験と知識を積み重ね、確実に“引き出し”を増やしていくことができます。しかし現実には、人事異動や組織の事情で長期間PR業務を担当し続けることは難しいのが実情です。ようやく経験が蓄積されてきた頃に部署が変わる、というケースも珍しくありません。

その点、PR会社は常にPR業務を専門としており、さまざまな業界・案件を通じて経験値を高めています。個人だけでなく、会社全体としてノウハウや知見を共有しながら成長していくため、PRの蓄積量が圧倒的に違います。

企業側に専任の担当者がいない場合や、担当者を育成する時間的余裕がない場合には、PR会社に依頼するという選択が、結果的にもっとも効率的で効果的だといえるでしょう。

PR会社は、単に広報活動を代行する存在ではありません。客観的な視点から企業の強みや課題を整理し、メディアや生活者に届くストーリーへと再構築する“パートナー”です。企画力と調整力――この2つを継続的に磨き続けているのが、PR会社の最大の強みでもあります。

 
 

著者・橘川徳夫 プロフィール

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中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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