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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

前回では、PR戦略を考える上で「What(何を)」、「Who(誰に)」、「Why(なぜ)」を考慮する必要があるとお話ししました。


今回は、「What(何を)」に焦点を当ててみたいと思います。


「What(何を)」と言われると、自社の製品やサービスを指すと当たり前に思われるかもしれません。しかし、PRの目的は「知られていないことに気づいてもらう」ことです。つまり、製品やサービスの中でまだ知られていない部分を伝えることが重要です。


新製品などまだ市場に出ていないものは、PRしやすいかもしれませんが、実際には既存の製品やサービスをPRする場合も多いです。この場合、製品やサービスの特徴や他社との違いを伝えることが重要です。


たとえば、自動車会社がEV(電気自動車)の販売を始めたとします。EV自体は既に世界中で販売されていますので、単に「EVを販売する」という情報だけではPRとしては十分ではありません。代わりに、他社との違いや製品の特長を強調することで、PR効果を高めることができます。


製品やサービスに関する情報をただ伝えるだけでは、前回お話ししたように、みんなが知っていることを知らなかったという結果になりかねません。ですから、PR戦略を考える上では、自社の製品やサービスについて深く理解し、また、市場の動向や競合他社の情報なども把握することが重要です。


また、「何を」探していると、様々な機能が発見されるかもしれません。しかし、PRを成功させるためには、伝えたいことを1つに絞ることが重要です。人々は一度に複数の情報を受け取ると覚えられなくなり、情報が分散すると印象に残りません。したがって、一番重要なことをメインに伝え、それ以外の情報は補足として提供するのが効果的です。


PR会社的な観点からは、複数の情報を同時に伝えることでPRの機会が増えると考えるかもしれませんが、一度のチャンスを逃すと次の機会が得られないこともあります。そのため、一番重要なことを決めることは非常に重要です。

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知られていないことをPRするには、どんな点を考慮すれば良いのでしょうか?

私は、PRを展開する際には5W1Hを考えることが重要だと考えています。ただし、文章を書くための5W1Hとは少し異なります。

 

When(いつ)→ PRを実施するタイミングを考えます。 

Where(どこで)→ PRをどの媒体で行うかを検討します。例えば、テレビなどのメディア露出やSNSメディアでの拡散などが挙げられます。 

Who(だれが)→ PRを対象とする人物やグループを特定します。

What(何を)→ PRしたい商品やサービスを明確にします。

Why(なぜ)→ PRをする理由や目的を明確にします。

また、How(どのように)→ 上記の要素をもとに具体的なPR戦略を立てます。

 

特にPR戦略を考える際に重要なのは、What(何を)、Who(誰に)、Why(なぜ)をまず考えることです。なぜなら、これらが明確でなければ、後のPR活動がうまくいかないからです。


例えば、SNSが流行っているからといって、ただYouTube動画を作ってPRするというのは順序が逆です。代わりに、特定の商品の使いやすさを若年層に伝えるための動画を作成し、YouTubeで幅広くアピールするというのが適切な戦略です。


一方で、高齢者向けの健康補助食品をPRする際にYouTubeを活用することは考えにくいでしょう。


次回以降は、What(何を)、Who(誰に)、Why(なぜ)について詳しく説明します。


 

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前回お話したように、「自分は知っているが、相手は知らない。」という情報がPRにおいて効果的であることを述べました。


しかし、実際のところ、このようなケースは稀で、「自分は知っているし、相手(みんなも)知っている。」というケースがほとんどです。


この議論は哲学的な側面も持ちますが、単純に相手に新しい情報を伝えることがPRにつながるということです。分かりにくいかもしれませんので、具体例を挙げて説明します。


例えば、弊社で「北斗の拳展」のPRを行った際に、多くの人々が「北斗の拳」の漫画・アニメは知っています。この場合、「北斗の拳展」のPRは効果がないと考えるかもしれませんが、そうではありません。PR会社が成り立つのもこのようなケースであり、そのためには新しいアプローチが必要です。


具体的には、「北斗の拳」のファンに対しては、展覧会の開催を伝えることに焦点を当てます。彼らにとって展覧会は魅力的なイベントであり、その存在を知れば参加したいと考えるでしょう。しかし、知らなければ行くことはできません。従って、PRの目的は展覧会の開催を知らない人々にその情報を伝えることにあります。


さらに、北斗の拳のファンでない人々にも興味を持たせる情報を提供することで、展覧会のPRを行います。例えば、この漫画やアニメに触れたことがない若い世代に対しては、影響を受けた漫画家や人気タレントが魅力を伝えることで、彼らにも展覧会への興味を抱かせることができます。


つまり、「北斗の拳の魅力を知らない」人々に対してその魅力を伝えることで、展覧会のPRを行うのです。


自分が知っていると思っていたことでも、新たな視点で見ることで未知の部分が見えてくるものです。PRの役割はそうした未知の部分を発見し、周知させることにあります。このような発見は自己成長にも繋がりますし、PR効果も高まります。


次回以降では、具体的なPR戦略の考え方について話を進めていきます。

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著者・橘川徳夫 プロフィール

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中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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