top of page

無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

【PRコラム】「何を目指す政党なのか」が伝わらない

18 分前
読了時間: 4分

―中道改革連合から考えるPR


今年2月の衆議院選挙で厳しい結果となった中道改革連合が、事実上の解体・分党という形に進むことになりました。

所属議員の大半が離党し、旧公明党系の議員は公明党へ戻り、旧立憲民主党系の議員は新党を結成。一方で中道改革連合には1人の議員が残り、残務整理などを行ったうえで最終的な組織整理をするとのことです。

さらに、分かれた後も国会では統一会派「中道」を組み、連携を続ける方針だとされています。

私はこの一連の動きを見ていて、PRという観点から非常に気になることがあります。

それは、「結局、中道改革連合は何を目指した政党だったのか」が国民にどこまで伝わったのだろうかということです。

 

中道改革連合側は今回の再編について、当初目指していた中道勢力の結集という目標自体を断念したわけではなく、新たな形で中道政治を前進させるためだと説明しています。

ただ、今年誕生した政党が衆院選を経て短期間で分かれ、それでも国会では統一会派として一緒に活動すると聞けば、

「では、なぜ政党を分けるのか」

と疑問を持つ人がいても不思議ではありません。

特に結党時から「選挙のための合流ではないか」という見方があった以上、今回の動きによって、結果的にそう受け取る人が増える可能性もあります。

だからこそ重要なのは、組織再編そのものよりも、なぜこの形にする必要があるのかを国民に納得できるように説明することだと思います。

 

そもそも政党とは、本来、政策や理念を国民に示し、「私たちはこんな日本をつくりたい」と訴える組織です。

もちろん、所属する政治家全員の考えが100%一致することなどないでしょう。

それでも優先する政策や基本的な方向性について合意し、それを継続して国民に伝えていく。

選挙期間だけではなく、普段から発信を続けることが重要なのだと思います。

 

これは企業のPRでも同じです。

私たちがPRの仕事をするときにもよく言うのですが、PRは一度やっただけで大きな効果が出るものではありません。

プレスリリースを一度出したから会社を知ってもらえるわけでもありませんし、一度メディアに掲載されたから企業の考え方まで理解してもらえるわけでもありません。

地道に、同じ方向性の情報を発信し続ける。

その積み重ねによって、少しずつ「この会社はこういう会社だ」というイメージがつくられていきます。

政治も同じではないでしょうか。

 

一度の選挙で思うような結果が出なかったから組織の形を変える。

それ自体には、それぞれの事情や理由があるのでしょう。

しかし、新しい政党をつくり、新しい名前を掲げれば、それだけで国民に政策が伝わるわけではありません。

むしろ、「以前の政党と何が違うのか」「なぜ別の政党にする必要があるのか」「目指している日本は変わったのか、変わっていないのか」

という新たな説明が必要になります。

企業でいえば、ブランド名を何度も変更しているようなものです。

名前が変わるたびに、それまで積み上げてきた認知やイメージについて、もう一度説明し直さなければなりません。

PRの立場から見ると、これはかなり大変なことです。

 

今回の中道改革連合の再編について、党側は「中道政治の旗は下ろさない」と説明しています。

それならば、なおさら国民に伝えるべきなのは、「中道とは何なのか」「どんな日本を目指すのか」、そして「そのためになぜ今回の組織再編が必要なのか」ではないでしょうか。

これは政治に限った話ではありません。

企業でも組織でも、発表する側はつい「何をするか」を説明することに一生懸命になります。

しかし、受け手が本当に知りたいのは、「なぜ、それをするのか」だったりします。

そして、その説明と実際の行動が一致していることが、長期的な信頼につながります。

今回の一連の動きを見ていると、少なくとも私には、中道改革連合が掲げた「中道政治」が今後どのような形で実現されるのか、まだ十分には見えてきません。

政治において政策を実現するには、選挙で勝つことが必要なのは当然です。

しかし、選挙に勝つことが目的になってしまえば、何のための政党なのかが見えなくなります。

 

政策を伝えることも、企業の理念を伝えることも、一度では伝わりません。

地道に発信し、それに沿った行動を続け、少しずつ信頼を積み上げていく。

結局、政治でも企業でも、PRの基本は同じなのだと思います。

日本の政治にとって、政権をチェックし、政策の選択肢を示す野党の存在は重要です。

だからこそ、新しい形になるのであれば、「誰と組むのか」「どんな名前にするのか」だけではなく、「どんな日本にしたいのか」を継続して伝えてほしいと思います。

それが伝わらなければ、どれだけ組織の形を変えても、国民から見える景色はあまり変わらないのではないでしょうか。


最新記事

すべて表示
【PRコラム】PRの相手は人間だけではなくなる?――AI時代のAIOを考える

最近、何かを調べるときにGoogleなどで検索するのではなく、ChatGPTをはじめとした生成AIに質問する人が増えてきました。 私自身も、ちょっとした疑問があるとAIに聞くことが増えています。 検索の場合は、表示されたサイトの中から自分で選び、そのページを読んで情報を得ます。 ところが生成AIの場合は違います。 「○○について教えて」と質問すると、AIが情報を整理して答えてくれます。 これは便利

 
 
 
【PRコラム】「同じですね」が人との距離を縮める

―プロフィールもPRになる 昨日、大学駅伝シーズンの開幕を告げる「出雲駅伝」が行われ、わが母校・中央大学は5位という結果に終わりました。 今回は優勝候補の一角として期待されていたこともあり、私も楽しみにしていました。レースでは前半から上位につけ、中大の選手がテレビに映る場面も多かったので、いつも以上に熱のこもった応援をしていました。 優勝を期待していただけに5位という結果は少し残念でしたが、選手た

 
 
 
【PRコラム】「偶然の出会い」がなくなる?――紙媒体から考えるPR

新聞や雑誌など、かつてメディアの主力を担っていた紙媒体が、次々と休刊や廃刊に追いやられています。 今はWEBの時代ですから、それも仕方がないことだと思います。 電車の中で大きな新聞を広げて読むより、スマホでサクッとニュースを読む方が便利です。漫画もスマホで読む人が増え、私自身も漫画アプリを利用しています。 ただ、便利になった一方で、失われつつあるものもあるような気がします。 それが、「自分が興味を

 
 
 

コメント


著者・橘川徳生 プロフィール

中央大学経済学部を卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、1990年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わる。

​

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案し。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングが好評を得ている。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

bottom of page