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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~


実際に参加して驚いたのは、大学生の考えがとても“しっかりしている”ことです。将来について真剣に考え、自分なりの価値観を持っている学生が多くて、正直、感心させられました。(このイベントに参加している学生の意識が高い、というのもあるかもしれませんが…)

 

ふと自分の大学時代を振り返ると、「なんとなくこの会社でいいかな」「かっこよさそうだから」程度の感覚で就職先を考えていたように思います。明確な将来像を持っていたわけでもなく、周囲もだいたい同じようなものだった気がします。

 

ただ、今の学生たちと接してみて、時代の違いも感じました。

現代の若者は、生まれたときからネットやスマホが当たり前にある世代なので、直接的な関係よりも、自分にとって“心地よい距離感”でのつながりを大切にする傾向があるように思います。それ自体は悪いことではありませんが、私たちの世代のように「空気を読む」「相手に合わせる」「みんなで楽しむ」といった感覚は、ちょっと苦手に感じる場面もあるかもしれません。

だから、無理に相手に合わせることがストレスになりやすいのではないでしょうか。我々が自然にやっていた“気配り”や“思いやり”も、今はちゃんと言葉にして、時にはマニュアル化して教える必要がある時代なのかもしれません。

それでも、今回出会った学生たちは、私の話にきちんと耳を傾けてくれました。「自分が正しい」と押しつけるのではなく、相手の価値観も受け入れながら、夢を実現する手助けができたらいいな、と思っています。

 

そして何より夢を語る若者の姿が、まぶしかったです。

この年齢になると、現実を知りすぎて、なかなか“夢”を持つのが難しくなります。だからこそ、夢を語れる若者たちが本当にうらやましい。今の私の夢といえば、「家族の健康や、社員の幸せ。」(本当ですよ(笑))そんなささやかな願いを大切にしながら、これからもできることをやっていきたいと思います。


ちなみに、「ジョブヨク」は社会人なら誰でも参加できるイベントです。学生との対話に興味がある方は、ぜひ一度参加してみてはいかがでしょうか?学びと気づきが、きっとあると思います。


ジョブヨクはこんな雰囲気のイベントです。
ジョブヨクはこんな雰囲気のイベントです。

 
 

少し前まで、あちこちで「SDG’s!」「SDG’s!」と連呼されていた気がします。テレビでも雑誌でも企業のPRでも、とにかくその言葉を目にしない日はない、というくらい盛り上がっていました。

最近では、さすがにその“熱狂”も少し落ち着いてきたように思います。とはいえ、最初にSDG’sという言葉を耳にしたとき、「何それ?」と戸惑った記憶は、まだ新しいという方も多いのではないでしょうか。


改めて整理すると、SDG’sとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、2016年から2030年までに達成を目指す、17の国際目標のこと。貧困、飢餓、健康、教育、ジェンダー平等、気候変動など、地球が抱えるさまざまな課題に対し、国や企業、そして個人が取り組むべき方向性を示しています。


理想は素晴らしい。だからこそ、誰も「反対」とは言いません。でも、いざ具体的な行動となると、途端に動きが鈍くなります。これが、SDG’sの“総論賛成・各論静観”という現実なのではないかと感じています。


例えば気候変動。大きな問題として意識はしていても、国際会議では各国の思惑が絡み合い、抜本的な対策は進んでいません。ごみの分別は大事とわかっていても、毎日の細かい仕分けが面倒に感じてしまいます。ジェンダー平等も声高に叫ばれるようにはなったものの、日本社会では依然として女性の社会進出は難しい現状です。「貧困をなくそう」と言っても、先進国ですら格差が広がり、貧困家庭が増加していて、もはや発展途上国だけの問題ではありません。


つまり、理想と現実のギャップが大きすぎるのです。社会構造も経済も利害も絡む中で、「これをやれば解決する」という一本化された方法は、そう簡単には見つかりません。


それでも、やっぱり何かしら動いていかないと、子どもや孫たちの世代が選べる未来がなくなってしまうかもしれません。

そう考えると、大きなことはできなくても、せめて“自分にできる小さなこと”から始めるしかない、と思うのです。


我が家の場合、それが「残飯整理」でした(笑)。家族が食べ残したごはんを、私が当たり前のように片付けます。昔から「残さず食べる」は美徳だったので、特に私は気にしていませんでしたが、最近では私のこの行動に対し、家族がこう呼びます。


「お父さん、SDG’sおじさんだね」


なんだか褒められているのか、利用されているのかわかりませんが(笑)、こういうちょっとしたことの積み重ねも、未来を変える一歩になると信じるしかないです。

まずは、「自分の目の前の小さなことからを」「無理のない範囲で」でも続けていくことが、SDG’sの本質に近いのではないかと感じています。

 

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先日行われた参議院議員選挙では、与党(自民・公明)が過半数割れとなり、国民民主党や参政党が大きく議席を伸ばすという結果になりました。これまでの政党に対する不信感や、変化を求める有権者の声が背景にあることは間違いありません。

 

以前このブログでも「選挙ではPRが重要」であるという話をしました(過去記事(オールドメディア vs. SNS?選挙PRのいま )はこちら)。選挙は、候補者や政党が「自分たちが何者で、どんな未来を描こうとしているのか」を有権者に知ってもらうための“広報の場”です。つまりPRそのものなのです。

有権者が投票を決める要素には、大きく以下のようなものがあると思います。

  1. どの政党に所属しているか

  2. 政策の中身

  3. 将来ビジョン・価値観

  4. 候補者の人柄

  5. 知人・家族などの推薦

この中で、何を重視するかは人それぞれですが、どれも「伝える努力」がなければ、有権者に届くことはありません。

 

今年の都知事選に出馬した石丸氏が立ち上げた新党「再生の道」は、その点において大きな課題を抱えていたように思います。特に、都議選で「党として政策は掲げない。候補者に任せる」とした方針は、多くの都民にとって“判断材料がない政党”という印象を与えてしまったのではないでしょうか。

 

結果として候補者全員が落選し、その後の「やむをえない」とのコメントには、リーダーとしての責任感や反省の色が見えず、困惑した関係者も多かったと思います。リーダーシップや姿勢は、政党の顔そのものであり、PRにおいても極めて重要です。

 

今回の参議院選では公約として「教育の質を高める」と掲げたものの、結果は議席ゼロでした。都議選での対応が影を落としたことは否定できません。また、SNSを軸に拡散してきた石丸氏のスタイルも、新党結成後は自らが批判の対象となり、ネガティブな印象を打ち消せなかった点で、PR的にも大きな誤算だったと言えるでしょう。

 

最近の選挙PRでは、X(旧Twitter)だけでなく、YouTubeを中心とした動画コンテンツの活用も目立ちます。映像の力は強く、メッセージを直感的に届けることができますが、一方で感情的・過激な表現が注目を集めやすく、対立や誤解を招くことも少なくありません。情報の伝達手段が多様化する今だからこそ、「どう伝えるか」だけでなく「何を伝えるか」がより問われています。

政治の世界でも、信頼を得るためには「政策」「人物」「考え方」を誠実に、そして継続的に伝えることが何より大切です。逆に、伝える力を軽んじたとき、有権者は「選ぶ理由」を見失ってしまいます。

 

私たちが選挙を通じて求めているのは、「伝わる政治」です。PRが政治の透明性を高め、日本の民主主義を一歩進める手段であることを、改めて感じさせられた選挙でした。

そして最後に願うのは、SNSや動画での発信ばかりに偏るのではなく、選挙で選ばれた議員たちが、国会という公の場で、しっかりと論戦を重ねていってほしいということです。言葉の力は、SNSの短文や動画の編集に頼るだけでなく、議論の中でこそ本領を発揮するものだと思います。

 
 

著者・橘川徳夫 プロフィール

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中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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