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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

【PRコラム】「同じ映画を5回観る」から考えた、推し活時代のPR

9月4日
読了時間: 4分

ウインダムでは、人気アニメの展覧会のPRを担当することがあります。

先日、たまたまそのアニメが大好きだという若い人と仕事をする機会があり、「展覧会のPRに関われてうれしい」と、とても喜んでもらえました。

その人と話をしていて驚いたことがあります。

そのアニメは映画化もされているのですが、なんと同じ映画を5回も観に行ったというのです。

私は、同じ映画を2回観ることすらほとんどありません。テレビで以前観た映画が放送されていても、もう一度観ようとはあまり思いません。

読書も趣味ですが、一度読んだ小説をもう一度読むことはほぼありません(ビジネス書などは別ですが…)。

ストーリーが分かっているものを何度観ても、何度読んでも結果がわかっているので、つまらないのではないかというのが私の感覚だからです。

 

ところが、その人の話を聞いていると、何度も観る理由が少し分かってきました。

いわゆる「推し」がいる人たちは、単にストーリーを楽しんでいるだけではありません。

「あの場面は、後のこの場面への伏線だった」「背景にこんなものが描かれていた」「このセリフには別の意味があるのではないか」など、作品の細部まで観ているそうです。

そして、自分が発見したことや気づいたことを、同じ作品が好きな人たちとSNSなどで共有します。

誰かの投稿を見て「そんなところまで観ていなかった」と思えば、もう一度作品を観て確かめたくなる。さらに新しい発見があれば、それをまた誰かに伝えたくなる。

なるほど、それなら同じ映画を5回観ることも理解できます。

私にも似たような経験があります。

例えばドラマを普通に観ていて、後から情報番組やネットなどで「あの場面にはこんな意味があった」「以前のシーンがここにつながっていた」と解説されると、「そんなところまで全く気づかなかった」と思うことがあります。

作品は一度観れば終わりではなく、「発見する」「考察する」「誰かと共有する」ことまで含めて楽しむものになっているのでしょう。

 

これはPRを考えるうえでも非常に興味深いことです。

かつては、できるだけ多くの人に知られている「国民的人気」の作品ほど、展覧会などでも集客しやすいと考えられていました。

もちろん知名度は今でも重要ですが、必ずしもそれだけではないようです。

幅広く知られている作品より、ファンの絶対数はそれほど多くなくても、非常に熱量の高い「推し」を持つファンがいる作品のほうが、何度も会場を訪れたり、グッズを購入したり、SNSで積極的に情報を発信したりすることがあります。

つまり、「何人が知っているか」だけではなく、「どれだけ強く好きな人がいるか」も大きな価値になっているのです。

しかも、推し活をする人たちは単なる消費者ではありません。

自分で作品の魅力を見つけ、それを発信し、別のファンが共感して、さらに情報が広がっていく。ある意味では、ファン自身がPRの担い手になっているとも言えます。

 

私は、いわゆる「推し活」をした経験がほとんどありません。

そのため、「なぜ同じ映画を5回も観るのか」というところから理解しなければならなかったわけですが(笑)、今回話を聞いたことで、今の消費行動について少し分かったような気がします。

PRする側が「この作品は人気があります」「こんなに面白い作品です」と一方的に情報を発信するだけでは、推し活の熱量を十分に生かすことはできません。

ファンは何に魅力を感じ、何を発見したくて、何を誰かと共有したいのか。

そうした「推す人の心理」まで理解してPRを考えることが、これからますます重要になるのでしょう。

今や「推し」は、消費だけでなく情報まで動かす存在になっています。

となると、マーケティングやPRに携わる人間も、推し活について勉強するだけでは足りないのかもしれません。

 

マーケティングに携わるなら、一度くらい夢中になれる「推し」を見つけてみたほうが、今の消費者心理を理解する近道になるのかもしれませんね(笑)。

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著者・橘川徳生 プロフィール

中央大学経済学部を卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、1990年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わる。

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落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案し。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングが好評を得ている。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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