【PRコラム】「偶然の出会い」がなくなる?――紙媒体から考えるPR
新聞や雑誌など、かつてメディアの主力を担っていた紙媒体が、次々と休刊や廃刊に追いやられています。
今はWEBの時代ですから、それも仕方がないことだと思います。
電車の中で大きな新聞を広げて読むより、スマホでサクッとニュースを読む方が便利です。漫画もスマホで読む人が増え、私自身も漫画アプリを利用しています。
ただ、便利になった一方で、失われつつあるものもあるような気がします。
それが、「自分が興味を持っていなかった情報との出会い」です。
WEBの便利なところは、自分が知りたい情報をすぐに見つけられることです。
その反面、検索やSNSなどを中心に情報を得ていると、自分が興味を持っている情報や、自分の考えに近い情報に触れる機会がどうしても多くなります。
テレビや新聞などのマスメディアが「オールドメディア」と批判されることもありますが、政治、経済、社会、スポーツ、文化、芸能、生活など、さまざまな情報を一度に届けてくれるという特徴があります。
また、一つの主張だけでなく、それに対する反論や異なる意見も併せて紹介されることがあります。
自分の考えと違う意見を読みたくない人にとっては余計な情報なのかもしれませんが、違う考え方に触れることも、本来は大切なことだと思います。
例えば新聞の場合、1面の記事を読もうと思って手に取っても、ページをめくれば政治、経済、社会、スポーツなど、さまざまな記事が目に入ってきます。
もともと興味がなかった分野でも、見出しを見て「これは何だろう」と読んでみることがあります。
雑誌も同じです。
目当ての記事を読むために買った雑誌でも、ページをペラペラとめくっているうちに、「こんなものがあるんだ」と思わぬ情報に出会うことがあります。
スマホでは画面の大きさが限られています。スクロールしなければ次の情報は見えませんし、途中で興味がなくなれば、そのまま離脱してしまいます。
欲しい情報を効率よく得られる反面、探していなかった情報に偶然出会う機会は少なくなっているのではないでしょうか。
テレビにも似たところがあります。
ニュース番組やワイドショーを何となく見ているだけでも、「今はこのタレントが人気なのか」「こんなものが若者の間で流行っているのか」と知ることがあります。
自分から検索することはなくても、テレビが勝手に教えてくれるわけです。
漫画についても同じことを感じます。
私は大学生の頃、3冊ほど漫画雑誌を愛読していました。
もちろん目当ての漫画があって買うのですが、せっかく一冊買ったのですから、それほど好きではない漫画も読みます。
その結果、いろいろな漫画家や作品を知ることができました。
最初はそれほど好きではなかった作品がアニメ化され、映像で見ることで違った魅力に気づくこともありました。
現在の漫画アプリは、好きな作品だけを選んで読めます。しかも無料で読める作品も多く、とても便利です。
しかし、「一冊買ったから、とりあえず全部読んでみる」という経験は少なくなりました。
便利になった代わりに、偶然知らない作品と出会う機会も減ったのかもしれません。
もちろん、これから紙媒体が再びメディアの主役に戻るとは思いません。
しかし、紙媒体が完全になくなるとも思いません。
むしろ、自分の好きなもの、興味のあるものだけを効率よく見る時代になればなるほど、新聞や雑誌の持つ「偶然の出会い」という価値が見直されてもいいのではないでしょうか。
自分の興味のある情報だけを集めていると、知識や考え方が固定化し、新しい発想も生まれにくくなるような気がします。
これはPRにも関係する話です。
PRとは、すでに興味を持っている人だけに情報を届ける仕事ではありません。
それまで興味がなかった人に情報が届き、「こんなものがあるんだ」と気づいてもらうこともPRの大切な役割です。
WEB広告のようにターゲットを絞って効率よく情報を届けることは、もちろん重要です。
しかし、効率だけを追い求めると、「まだ興味を持っていない人」との接点を失ってしまう可能性もあります。
PR会社としては、WEBの便利さを十分理解したうえで、それでも新聞や雑誌などの紙媒体が持っている「偶然、目に入る」「知らなかったことに気づく」という力にも、改めて目を向けてもらいたいというのが本音です。
情報があふれる時代だからこそ、「探していた情報」だけではなく、「探していなかった情報と出会うこと」にも価値がある。
紙媒体の良さは、案外そんなところに残っているのかもしれません。



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