top of page

無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

電力需要の急増と原子力PRの新たな課題─「不足だから原発」では伝わらない


前回のコラムで、原子力発電所が地方自治体に経済的な恩恵をもたらしている現実についてお話ししました。今回は、カーボンニュートラルの推進と並んで、原子力発電が再び必要とされる理由のひとつである「電力需要の増大」について考えてみたいと思います。

 

私が電力会社に勤めていたころは、「日本の電力需要は今後大きくは伸びない」というのが一般的な見方でした。理由は明確で、家電製品の省エネ化が進んでいたこと、そして日本の人口減少が予測されていたからです。

ところが、時代は予想を超えるスピードで変化しました。インターネットの発達により、あらゆる産業がデジタル化し、それに伴ってデータセンターの需要が急増しました。特に近年は、AI(人工知能)の進化が電力事情を一変させつつあります。AIの学習や運用には膨大な電力を必要とするため、世界的に「データセンターが電力を食い尽くす」とさえ言われています。

さらに、自動車産業でもエネルギー転換が進んでおり、電気自動車(EV)が普及すれば、家庭や都市部での電力需要は確実に上昇します。こうして電力の需要構造が変化する中、「電気が足りない」という現実が目前に迫りつつあります。

 

では、その電力をどう確保すればよいのでしょうか。カーボンニュートラルの観点からは、石炭や石油といった化石燃料に頼ることはできず、再生可能エネルギーもまだ十分に普及していません。結果として、「では原子力で補うしかない」というのが政府の現状の考え方のようです。結果として、「では原子力で補うしかない」というのが政府の現状の考え方のようです。

ただし、この説明をそのままPRのメッセージにしても、国民の共感は得られにくいと感じます。「電力が足りないから原子力を使う」という論理は、選択肢がないから仕方なく使うという印象を与えてしまうからです。PRとしては、ストーリー性に欠け、未来への希望や納得感を伝えにくいのです。

 

原子力発電の必要性を理解してもらうには、「不足だから仕方なく使う」のではなく、どう使えば社会に価値を生むかという視点が欠かせません。

たとえば、データセンターと原子力発電所を同じ地域に隣接させ、地方の産業活性化を図るような構想があれば、電力ロスを減らし、地域雇用を生むという一石二鳥の効果が期待できます。これは単なるエネルギー供給ではなく、「地方創生と技術革新を結びつけたPRストーリー」として描ける可能性があります。

しかし現行の法律では、電力会社が特定の企業や施設に優先的に電力を供給することは禁止されています。電力供給の公平性を保つための規制ですが、こうした仕組みが柔軟にならなければ、新しいエネルギー戦略の展開は難しいのが現実です。

 

結局のところ、原子力発電を効果的にPRしていくには、単独での訴求には限界があります。エネルギー政策と産業政策を一体的に進め、その中で原子力の役割を位置づけることが重要です。

「電力不足だから原発」ではなく、「電力を支えることで、産業と地域を強くする」のような社会全体の発展と結びつけて語ることができなければ、原子力のPRは浸透しません。

 

原子力に対するPRの目的は、単に理解を得ることではなく、納得を得ることにあります。人々が「これなら必要だ」と思えるストーリーを描くことができなければ、どんなに正しい理屈でも支持は広がりません。

今後、AIやEVなどの新たなテクノロジーが進む中で、電力は確実に「社会の血液」としての重要性を増していきます。そのエネルギーをどう供給し、どう未来に活かすのかという課題に応えられること訴えなければ、原子力のPRが本来果たすべき役割があるのだと思います。

 
 

~営業効率を上げるためのPR活用術~


以前のPR講座でもお話ししましたが、営業も広い意味でのPRの一つです。実際、多くの企業においてPRは「営業戦略の一部」として位置づけられています。

BtoB企業でも、商品名や企業名が知られていることは大きな強みになります。

また、新聞記事などで大きく取り上げられた実績を営業先に見せることで、信頼度が高まり、話を聞いてもらいやすくなります。

こうした意味で、「PRは営業を支援する施策」として非常に有効です。

 

とはいえ、BtoBの売上を伸ばすうえでは、営業先が明確に決まっていることが多いのも事実です。

たとえば、バスを販売したい場合、以下のような企業がターゲットになります。

  • バス会社

  • 工場や事業所を持つ企業(従業員送迎用)

  • これまで購入実績のある企業

これらの企業に直接営業をかける方が、テレビCMで「燃費が良い」「性能が高い」とアピールするより遥かに効果的です。テレビを見ている一般の人は、バスを買う立場ではないからです。

確かに視聴者の中には「バス購入担当者」もいるかもしれませんが、費用対効果の観点では、営業担当が直接訪問する方が圧倒的に効率が良いのは間違いありません。

 

ただし、PR活動が不要という話ではありません。

たとえば、バスを利用する一般の人は非常に多いです。その人たちがテレビCMで「乗り心地の良いバス」という印象を持ったとします。

すると――

  • 新車導入時に喜ばれる

  • 今のバスが不満な利用者が「このメーカーにすべきだ」と声を上げる

こうした現象が起きる可能性があります。つまり、最終利用者の声が営業に影響を与えることもあるということです。

このように、PRは直接の売上につながらなくても、営業活動を後押しする場面が必ずあります。問題は、どこまでPRに費用をかけるかという企業の判断なのです。

 

PR会社としては、本来なら広告のように費用をかけず、記事パブリシティなどを通じて自然な形で企業の価値を伝えることができれば、営業効果は非常に高まると考えています。

しかし、営業主導の企業では、「PRの効果」が可視化しにくいため、理解されづらいのが現状です。

  • PRによってどれだけ売上が伸びたのか?

  • PRをしなかった場合と何が違うのか?

これらを数値として証明するのはとても難しく、PR会社としても悩ましいポイントです。

 

最近では、BtoB企業がテレビCMを放送するケースが増えています。一見すると「一般消費者向けの商品がないのに、なぜ?」と思われるかもしれませんが、その背景には営業以外の狙いがあります。


まず一つは 採用効果 です。

  • 企業名が知られている方が新卒採用で圧倒的に有利

  • 親世代も「テレビCMをしている会社なら安心」と感じる

これらは、企業側が意識している大きなメリットです。


さらにもう一つ、企業イメージの向上効果 があります。

テレビCMによって企業名が浸透すると、「ちゃんとした会社」「信頼できる会社」という印象が自然と社会に広がります。BtoB企業の場合、一般消費者との接点が少ないため、社会的な認知が薄くなりがちですが、CMを通じて企業イメージを積極的に形成できるようになるのです。

この“イメージの良さ”は、

  • 取引先の信頼

  • パートナー企業との関係

  • 採用時の応募意欲

などに影響するため、長期的には営業活動の後押しにもつながります。 


一般の消費者向けの商品を扱っていない企業でも、社会的認知の獲得とブランド価値の向上というメリットを狙ってCMを活用しています。こうした企業イメージは、取引先の信頼にもつながり、結果的に営業活動の“土台”を強くする効果があります。

 

BtoBビジネスにおいて、営業活動が売上につながるのは間違いありません。しかし、その営業活動を支えるのがPRの役目でもあります。

そして、どれだけPR費用をかければ成果が最大化するかは企業の戦略次第なのです。

残念ながら、PR施策の効果を直接数値化するのは難しいですが、確実に企業の“土台”を強くするのがPRの力です。

PR会社としても、このジレンマは永遠の課題ですが、だからこそ 「営業とPRのバランスをどう取るか」 が企業の戦略として非常に重要になります。

 

 

 
 

―四季を恋しがるおじさんの独り言



今年の夏は本当に暑かったですね。猛暑という言葉では足りないくらいの暑さで、9月になってもまだ真夏日が続き、「一体いつまで夏なんだろう」と思っていました。ところが10月に入ると一転、急に寒くなり、秋を感じる間もなく冬が来てしまったような気がします。


そんな中、今年の新語・流行語大賞に「二季」という言葉がノミネートされました。最初は「何のこと?」と思いましたが、どうやら地球温暖化の影響で、春や秋が短くなり、“暑い夏”と“寒い冬”の二極化が進んでいるという意味だそうです。もし本当に「二季」の時代になってしまったら、日本人としてはやはり寂しいですね。


日本の四季は、世界に誇れる美しさと情緒があります。桜や紅葉、雪景色、そして入道雲――どれも季節ごとに変化する自然が作り出す風景です。お祭りや行事なども、四季の移ろいの中に生まれ、育まれてきました。こうした季節の表現があったからこそ、俳句のように「季語」を大切にする文化も生まれたのだと思います。

ただ、季節が変われば行事の在り方も変わってきます。運動会は5月や10月でも暑さ対策が必要になり、屋内開催を検討する学校も増えました。夏祭りや花火大会は、熱中症や台風の影響で中止になることもあります。一方で、冬のスキー場では雪不足が問題になり、人工雪に頼るケースもあるそうです。

 

かつては、春になれば桜を見ながら花見酒。夏は汗を流してビアガーデンで一杯。秋は紅葉狩りの後に温泉で一杯。冬は鍋を囲んで熱燗で一杯。

……私の場合は、単に「飲む口実」が四季とともにあるだけかもしれません(笑)。

 

清少納言の『枕草子』には「春はあけぼの、夏は夜」と、四季の移ろいを感じる美しい描写があります。四季をどう感じるかは人それぞれですが、その変化があるからこそ、季節のありがたみを感じられるのだと思います。

それが感じられなくなるのは、やはり寂しいことです。

地球温暖化は自然現象のように見えても、実際は人間の行動が引き起こしたもの。自業自得と言われればそれまでですが、やはり四季を失いたくはありません。

四季があるからこそ、日本人は情緒を育み、暮らしに彩りを感じてきたのだと思います。どうか「二季」ではなく、これからも春夏秋冬を感じられる日本であってほしい。……でないと、おじさんとしては、季節ごとの“飲む口実”がなくなってしまうのですから。


 
 

著者・橘川徳夫 プロフィール

ダウンロード.jpg

中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

bottom of page