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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

~あえて「自分ならこうする」という提言~


原子力のPRについては、4月15日のコラムで一応の区切りをつけたつもりでした。

しかし振り返ってみると、一般論に終始してしまい、「ではどうすればいいのか」という具体的な提案がほとんど書けていなかったように感じます。

そこで今回は、もし自分が原子力のPRを任されたらどうするかという視点で、あえて具体的な企画として整理してみました。もちろん、実現可能性や関係者の合意などは一切考慮していない“仮説の提案”です。

 

①「安全性の議論」からあえて離れる

まず大前提として、安全性をいくら訴えても100%の理解は得られないという現実があります。

特に日本は地震大国であり、「絶対安全」という言葉はどうしても疑念を持たれてしまいます。この土俵で議論を続けても、PRとしては限界があります。

そこで発想を変えます。

原子力発電を続ける理由を「安全だから」ではなく、「安全性を高め続けるために必要だから」と位置づけるのです。

原子力をやめれば、技術者は減り、研究も衰退し、結果として安全性を高める力そのものが失われていきます。

実際、日本の大学でも原子力分野の人気は低下しています。

つまり、原子力を維持すること自体が安全性の維持につながるというストーリーでPRを展開するという考え方です。

 

②世代別にメッセージを分ける

原子力の問題は、世代によって関心や価値観が大きく異なります。

そのため、ターゲットごとにメッセージを明確に分ける必要があります。

■若い世代向け

・電気のない社会の不便さ・デジタル社会を支える電力の重要性・地球温暖化とCO₂削減の必要性

これらを軸に、「自分たちの未来を守るためのエネルギー」として原子力を位置づけます。

再生可能エネルギーが理想であることは前提としつつ、現実として電力需要に追いついていないことも含めて、「過渡期の現実解」としての原子力を伝えていく必要があります。

■中高年層向け

こちらはより現実的な視点です。

・エネルギー安全保障・資源のない日本の現実・国力維持という観点

例えば。現在の中東情勢などの不安定さを踏まえ、「輸入に頼るリスク」を軸に訴求します。

感情ではなく、国家としての持続性・安定性に焦点を当てる方が響きやすい層です。

 

③イメージ戦略を軸にする

原子力はどうしても難しく、関心を持たれにくいテーマです。理論で押しても限界があります。

そこで必要なのが、イメージ戦略です。

■中高年層:タレント起用

信頼感・安心感のある人物を起用します。例えば(あくまでイメージ案ですが)

  • 阿部寛 

  • 天海祐希 

  • 内村光良 

など、「信頼」「誠実」「知的」といったイメージを持つ人物です。

テレビCMなどを通じて、難しい話ではなく「必要なものとしての認識」を自然に浸透させることが狙いです。

■若年層:コンテンツ化(アニメ・ゲーム)

若い世代には、説明ではなく体験や感情に訴える理解が有効です。

・エネルギー問題をテーマにしたアニメ・電力・技術を題材にしたゲーム

といったコンテンツを通じて、単に知識として理解させるのではなく、

「原子力発電に関わること=社会を支えるかっこいい仕事」

というイメージを醸成することが重要です。

例えば、最先端技術に携わるエンジニア、社会インフラを守るプロフェッショナル、危機を未然に防ぐスペシャリストなど、ヒーロー性や使命感を持ったキャラクターを描くことで、若い世代にとっての憧れの対象として認識される可能性があります。

ポイントは、PR色を前面に出すのではなく、純粋に面白い作品として成立させることです。

その結果として、「気づけば原子力やエネルギーに興味を持っていた」という状態をつくることが、最も自然で効果的なアプローチになると考えます。

 

④全国規模での統一PR

現在、日本の電力会社は地域ごとに分かれているため、PRもバラバラになりがちです。

しかし、原子力は本来、国全体のエネルギー政策の問題です。

そのため、

・国・電力会社・関連団体

が連携した全国統一のPR戦略が必要になります。

特に重要なのは、地方だけでなく都市部の理解を得ることです。

立地地域だけでなく、電力を消費する側の意識を変えなければ、本質的な支持は広がりません。

 

ここまでいくつかのPR案を挙げてきましたが、正直なところ、これを実行したとしても、すぐに賛成が増えるとは思っていません。

それだけ原子力の問題は複雑であり、簡単に結論が出るテーマではないからです。

また、私は原子力の関係者でもなく、あくまで一個人としての提案に過ぎません。予算や現実性を考えれば、実現は難しい部分も多いでしょう。

ただ一つ重要だと感じているのは、国や電力会社が一方的に「こうあるべきだ」と主張するのではなく、国民に寄り添った形での発信が不可欠であるという点です。

そしてもう一つ、PRの本質についても改めて考える必要があります。

PRとは単に理解してもらうことでも、納得してもらうことだけでもなく、まずは「気付きを与えること」、そして「知らないことを知ってもらうこと」から始まります。

このブログでも、原子力の安全性やエネルギー事情など、さまざまな論点について書いてきましたが、正直なところ、それらを十分に理解している人、あるいは問題意識を持っている人は、ごくわずかではないでしょうか。

そうした状況の中で、十分な情報や理解がないまま「賛成か反対か」を求めても、難しいのは当然です。

一方で、詳しいことは知らなくても「何となく必要なのではないか」と感じている人がいるのも事実です。それはPRの観点から見れば、決して悪いことではなく、むしろ可能性のある状態とも言えます。

であればこそ、結論を急ぐのではなく、まずは知ってもらい、気づいてもらう機会を増やしていくこと。その積み重ねが、やがて理解や納得につながっていくのだと思います。

原子力のPRは簡単ではありませんが、地道に続けていくことでしか道は開けない――今回の検討を通じて、改めてそう感じました。

 
 

6月は「ジューンブライド」の季節です。日本では梅雨の時期にあたり、気候的には決して結婚式に向いているとは言えませんが、それでもこの時期に結婚式を挙げたいと考える人は少なくありません。

やはり、ウエディングドレス文化が定着したことで、欧米の「6月の花嫁は幸せになれる」という価値観が日本にも浸透しているのでしょう。

 

PRの観点から見ると、結婚というのは非常に強い話題性を持っています。

芸能人やスポーツ選手など有名人の結婚は、大きなニュースとして取り上げられ、多くの人の関心を集めます。

恋愛スキャンダルとは違い、「結婚」は基本的に祝福される話題です。さらに、人は有名人のプライベートに興味を持つため、「知りたい」というニーズにも合致しています。

そのため、結婚発表は昔から非常に優秀なPRコンテンツでした。

以前であれば、有名人の結婚式がテレビ中継されることも珍しくありませんでした。実際、結婚式というイベントは、演出も感情も詰まっていて、見ている側も楽しめる“コンテンツ性”があります。

 

ただ最近は、そもそも結婚式を挙げない人が増えています。

私自身、若い頃はかなり多くの結婚式に出席しましたが、最近では招待される機会もめっきり減りました。

実は、私の姪もコロナ禍で結婚したのですが、結婚式を挙げなかったどころか、事前の連絡もなく、後から知る形となり、少し寂しい気持ちになりました。

もちろん、本人たちの自由ですし、価値観の変化もあるのでしょう。ただ、それだけ「結婚」や「結婚式」に対する認識が、特に若い世代を中心に変わってきているのは間違いないと感じます。

 

ここまで「結婚はPRネタとして強い」と書いてきましたが、実は企業PRとの相性はそれほど良くありません。

季節ネタ、周年記念、受賞歴などは企業PRに結びつけやすいですが、結婚はあくまで個人の出来事です。

例えば、有名IT企業の社長が結婚すればニュースになるかもしれませんが、一般企業の社長が結婚したところで、大きな話題にはなりません。

つまり、結婚というネタは「受け手は興味を持つ」が、「発信側がコントロールしにくい」という特徴があるのです。

 

現在、日本では少子化が大きな社会問題になっています。

そう考えると、国としても「結婚」や「出産」が前向きで幸せなものだというイメージを、もっと積極的にPRしていく必要があるのではないでしょうか。

実際、有名人の結婚や出産は、今でも大きなニュースになります。それだけ社会的関心が高いテーマなのです。

であれば、単なるゴシップとして扱うのではなく、

  • 家族を持つことの魅力 

  • 子育ての楽しさ 

  • 結婚生活の幸せ 

などを、人気のある芸能人や著名人を活用して発信していくことも、少子化対策の一つのPR戦略になるように思います。

 

結婚に対する価値観は時代とともに変わっています。ただ、それでも「誰かの幸せを祝福したい」という気持ちは、多くの人が持っている感情ではないでしょうか。

だからこそ、結婚というテーマは、今でも人の心を動かす力を持っています。

少子化対策というと、補助金や制度設計ばかりが議論されがちですが、「結婚や家庭を持つことへの前向きなイメージづくり」も、実は重要なPRなのかもしれません。

 
 

~記者会見はいらない時代なのか?~



最近、芸能人の結婚のニュースは、本人のSNSから発信され、それがそのままニュースになるケースが増えてきました。一昔前であれば、週刊誌にスクープされ、記者会見を開いて正式に発表するという流れが一般的でしたが、今は本人がSNSやブログで発信し、それをメディアが取り上げる形が主流になりつつあります。

芸能人の場合であれば、たとえ詳しいエピソード(交際のきっかけやプロポーズの言葉など)が語られなくても、あくまで私人ですから、「本人の自由」として受け止めることができます。

 

しかし最近では、公人である大臣や議員までもが、SNSで発信して終わりというケースが増えているように感じます。

本来、記者会見という場は、単に一方的に発表するだけではなく、その内容に対して疑問があればその場で質問できるという大きな役割があります。

記者は「国民の代表」というと少し大げさかもしれませんが、少なくとも世間が知りたいことを代弁している存在です。そのため、本人が語った内容について、疑問点を掘り下げ、より理解しやすい形で伝えるという役割を担っています。

もちろん、最近ではスキャンダルを追及することに重きを置く記者もいるのは事実ですが、本来の記者会見の意義は、情報を深く理解させるための場にあります。

 

一方、SNSは自分の考えをダイレクトに伝えられるという大きなメリットがあります。特に、メディアが自分の意図通りに報じてくれないと感じている政治家にとっては、有効な手段でしょう。

実際、この流れは特にアメリカのトランプ大統領の発信スタイル以降、世界的に広がったとも言われています。

ただし、SNSはあくまで一方通行の情報発信です。その内容が正しいのかどうかをその場で検証する仕組みはありません。

さらに、受け手も自分の考えに近い情報だけを選んでしまいがちで、結果として情報が二極化しやすいという問題もあります。

 

本来であれば、メディアがその情報を検証し、メリット・デメリットや問題点を整理して伝えることで、国民はより正確に判断することができます。

しかし、最近のメディアを見ていると、有名人や政治家のSNS投稿をそのまま記事として掲載するケースも増えており、「それは本来のメディアの役割なのか?」と疑問を感じる場面もあります。

背景には、アクセス数を稼ぐために、コストをかけずに話題性のある情報を扱いたいという事情もあるのでしょう。それは理解できないわけではありませんが、それでもメディアとしての矜持は守ってほしいところです。

 

PRの観点から見ると、SNSによる直接発信は非常に強力な手段です。

ただし、それだけに頼るのではなく、第三者の視点を通じて情報を補完することが、信頼性を高める上で重要です。

SNSだけで完結する情報発信は、コントロールしやすい反面、疑問を残したままになりやすく、結果として不信感を生む可能性もあります。

 

昨今の政治家によるSNS発信の増加は、発信する側だけの問題ではなく、それを受け止めるメディア側にも課題があると感じます。

本来、

  • 正確な情報を精査して伝えるメディア

  • それを適切に活用する政治家 

この両方が機能してこそ、国民は正しい判断ができるはずです。

情報があふれる時代だからこそ、何をどう伝えるか、そしてどう受け取るかが、これまで以上に重要になっているのだと思います。

そうなると、記者会見の企画や運営を担うPR会社としては、「出番が減ってしまうのではないか」と少し心配になるのも正直なところです。

とはいえ、それも時代の流れなのかもしれません。SNSとメディア、それぞれの役割をうまく活かしながら、より良い情報発信の形が生まれることを期待したいと思います。

 
 

著者・橘川徳夫 プロフィール

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中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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