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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~


先日、作家の東野圭吾さんが亡くなったというニュースが流れました。

私は東野さんの本を50冊以上は読んでいる大ファンなので、このニュースには本当に驚きました。

 

東野作品の魅力はいろいろありますが、その一つは理系出身ならではの発想だと思います。「ガリレオ」シリーズでは科学的なトリックを使いながら、それを難しく感じさせず、エンターテインメントとして面白く読ませてくれます。

一方、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』や「クスノキ」シリーズでは不思議な出来事を交えながら人と人とのつながりを描き、「ラプラスの魔女」シリーズでは科学と超常的とも思える現象を少しシリアスに描いています。

 

そして、私が東野作品の中で最も感動したのが『手紙』です。

犯罪を犯した加害者本人だけでなく、その家族が背負わなければならないものを描いた作品で、読んだ後にいろいろなことを考えさせられました。

東野作品には、事件の謎を解くことだけを目的とするのではなく、被害者や加害者、その家族など、それぞれの立場から人間を描いた作品が数多くあります。

誰が正しくて誰が間違っていると簡単には割り切れない、人間の弱さや矛盾、そしてそれでも生きていかなければならない人たちの姿が描かれていて、読むたびに考えさせられます。

ミステリーとして面白いだけでなく、その奥に人間というものを深く考えさせるテーマがあることも、私が東野作品を読み続けてきた理由なのだと思います。

 

また、私にとって特に親しみがあるのが、加賀恭一郎を主人公とする「新参者」です。舞台が弊社のある日本橋人形町だったため、ドラマの撮影を何度か目撃したこともあり、とても身近に感じた作品です。

加賀恭一郎も、単に事件を解決する名探偵ではなく、人間味がありながら鋭い観察眼を持った魅力的な人物です。

 

東野さんの作品は、数多く映画化、テレビドラマ化されています。

小説を読んでから映像作品を見ると、自分が想像していた世界との違いに違和感を覚えることもありますが、東野作品は比較的原作の世界観を大切にしているものが多いように感じます。

 

そして、ここから少しPRの話になります。

小説が映画やドラマになれば、それまで作品を知らなかった多くの人にも、その作品が描いている世界を知ってもらうことができます。つまり、小説や映像作品という「物語」は、大きなPRの力を持っているということです。

 

例えば、「ガリレオ」を読んだりドラマを見たりして、「物理学者って格好いい」と感じ、物理学に興味を持った若者がいるかもしれません。東野さんはスノーボードを題材にした作品も書いていますが、それを読んでスノーボードの魅力を知った人もいるでしょう。

「物理学は面白い」「スノーボードは楽しい」と直接説明するより、面白い物語の中でその世界に触れた方が、自然に興味を持ってもらえることがあります。

これはPRにとって、とても重要なことだと思います。

 

ただ、「PRしたいから小説を作ろう」と考えても、そう簡単にはいきません。まず作品そのものが面白くなければ読んでもらえませんし、映画化やドラマ化にもつながりません。

PRありきで物語を作るのではなく、まずコンテンツとして面白い。その結果として多くの人に届き、そこに描かれた世界にも興味を持ってもらえる。

そういう意味でも、科学からスポーツ、そして人間の弱さや社会が抱える難しい問題までを魅力的な物語として描き、多くの人に届けてきた東野圭吾さんは、やはり一流の作家だったのだと改めて感じます。

 

今回の訃報は、私にとって本当に悲しい知らせでした。68歳であれば、まだまだ新しい作品を読むことができると思っていただけに、もう新作を読めないことが残念でなりません。

PRとは、「知らなかったことを知ってもらうこと」「新しいことに気づいてもらうこと」でもあります。

東野さんの作品は、知らなかった世界を知るだけでなく、自分とは違う立場の人の人生や気持ちについて考える「気づき」も与えてくれました。

そう考えると、「物語が人に何かを伝える力」は、PRにも通じるものがあるのかもしれません。


これまで数多くの素晴らしい作品を世に送り出していただき、本当にありがとうございました。

一人のファンとして心より感謝するとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします。

 
 

最近、ある俳優と女優の間で起きた出来事をきっかけに、ハラスメントが大きな話題になりました。最初にお断りしておきますが、私はハラスメントを肯定するつもりはまったくありません。

 

相手が嫌だと感じれば、それはハラスメントになり得るという考え方も理解していますし、加害者の多くが男性であることも、さまざまな統計から明らかになっています。

だからこそ、私自身も普段から言葉や態度には気を付けているつもりです。

 

それでも最近、「おじさん世代は生きづらくなったな」と感じることがあります。

私たちが若い頃は、今で言うセクハラやパワハラにあたるような言動が、残念ながら珍しくありませんでした。

もちろん、それが良かったとは思っていません。

当時は「そういうものだ」と受け入れてしまっていただけです。

上司に厳しく叱られても、「自分が悪い」「もっと頑張らなければ」と考える人がほとんどでした。

時代が変わり、人権意識が高まり、「相手を尊重する」という考え方が社会に浸透してきたことは、とても良いことだと思います。

私自身も、昔なら何気なく言っていたことでも、「これは相手がどう感じるだろう」と一度考えるようになりました。

ただ一方で、長年染みついた感覚をすぐに変えられる人ばかりではありません。

昔は正しいと思っていたことを、「あれは間違っていた」とすぐ認めるのは、なかなか難しいものです。

 

もちろん、それを理由に許されるわけではありません。だからこそ、おじさん世代も時代に合わせて学び続ける必要があるのだと思います。

ただ一方で、「これを言ったらハラスメントになるかもしれない」と考えすぎて、若い人に何も言えなくなっている人も増えているのではないでしょうか。

コミュニケーションを避け、お互いを理解する機会が減ってしまうのは、とても残念なことです。

私たちおじさん世代は、「こうしたほうがもっと良くなる」「同じ失敗をしてほしくない」という思いから、自分の経験を話したり、改善点を伝えたりすることがあります。

もちろん、怒っているわけではありません。

しかし、その思いが「説教された」「否定された」と受け取られてしまうこともあります。

だからといって何も言わなければ、相手の成長につながるきっかけも失われてしまいます。


結局大切なのは、相手に伝わる言葉を選び、受け入れてもらえる伝え方をすることなのでしょう。

それが、これからの時代のコミュニケーションなのだと思います。


おじさん世代は、これからますます「言葉選び」が大切になりそうです。

とはいえ、気を遣いすぎて何も話せなくなってしまうのも考えものです。

そのうち、「若者から、おじさんへのハラスメント」なんて言葉が生まれたりして……。

いや、その前に「その発言がハラスメントです」と怒られそうなので、この辺でやめておきます(笑)。

 
 

今年の夏も、本当に暑いですね。

そんなある日、妻から「日傘をさして駅まで行ったら?」と言われました。

実は以前から勧められていたのですが、どうも気が進みませんでした。

男性で日傘をさしている人は以前ほど珍しくなくなったとはいえ、まだ少数派ですし、駅や人混みで日傘をさしている人を見ると、「ちょっと邪魔だな」と思っていたこともあって、自分が使う気にはなれなかったのです。

 

実は、この日傘は妻が以前から「欲しい」と言っていたものでした。人気商品だったようで、どこへ行っても売り切れ。ようやく在庫のあるお店を見つけて、誕生日プレゼントとして買いに行ったのです。

そのお店には、「体感温度が下がる」を体験できるコーナーがあり、傘をさした時とささない時の違いを試すことができました。

確かに、傘の下に入ると暑さが和らぐ感じがして、「これはすごいな」と思ったことを覚えています。

とはいえ、その時は「お店の演出もあるだろうし、本当に毎日使ってもこんなに違うのかな」と、どこか半信半疑でした。

ところが、自分で駅まで使うようになってみると、「あの体験は本当だったんだ」と実感しました。暑さが少し和らいで感じますし、駅に着いた時の汗も以前より少ないような気がしています。

 

もちろん、科学的に測ったわけではありません。

でも、「涼しい気がする」というだけでも十分な効果なのかもしれません。

そもそも妻が勧めた理由は、暑さ対策というより紫外線対策でした。

最近、鏡を見るたびに思うのです。

「シミが増えたなあ……」と。

思い当たる原因はあります。

 

15年近く続けているランニングです。

私はランニング中、ほとんど日焼け対策をしてきませんでした。

日焼け止めクリームは汗をかくとベタつく気がして面倒でしたし、「そのくらい大丈夫だろう」と思っていたのです。

夏だけでなく、一年中太陽の下を走っていますから、紫外線を浴び続けてきたことになります。

そう考えると、シミが増えるのも当然なのかもしれません。

 

そこで日傘に続き、今度は日焼け止めクリームにも挑戦することにしました。

最近はスポーツ用で汗や水に強いものもあるそうで、「これならランニングでも大丈夫かな」と試し始めたところです。

まだ使い始めたばかりなので、効果はこれからのお楽しみですが、少なくとも「何もしないよりはいいだろう」と思っています。

 

それにしても、この歳になってシミを気にするようになるとは、自分でも少し驚いています。

悪いことではないのでしょう。

健康を気遣うのと同じように、自分の肌を気遣うことも大切なのだと思います。

それでも、どこか照れくさい気持ちがあるのは、「男はそんなことを気にするものじゃない」という昭和のおじさんの価値観が、まだ心のどこかに残っているからなのかもしれません。

 

とはいえ、これからは男性も日傘をさすことが当たり前の時代になっていくのでしょう。

そう考えると、「おじさんにしては、意外と時代の先を行っているな」と、内心ちょっとだけ自慢したくなります。

昭和のおじさんだからといって、「昔は男は日傘なんてささなかった」と意地を張って、時代の流れに乗り遅れるのは避けたいものです。

せっかくなら、「あのおじさん、意外と新しいものを素直に取り入れているね」と言われるくらい、時代に敏感なおじさんでいたいと思っています。

……まずは日傘と日焼け止めクリームを使いこなして、「シミの少ないおじさん」を目指すところから始めたいと思います。



 
 

著者・橘川徳夫 プロフィール

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中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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