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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

 消費税減税から考える政治のPR


高市内閣は今月、飲食料品にかかる消費税率を引き下げる方針を決定しました。

これは昨年の衆議院議員選挙で掲げた、食料品の消費税負担を軽減するという公約を実現するための政策です。

選挙で公約を掲げ、その選挙に勝利したのですから、公約の実現に向けて動くこと自体は当然のことだと思います。

 

ところが、今回の政策に対しては野党やメディアから多くの疑問が投げかけられています。

昨年の選挙では、与野党の多くが消費税の減税や廃止を公約に掲げていました。それにもかかわらず、政府が実際に税率を引き下げようとすると反対意見が出てくるのですから、「では選挙の時に掲げていた公約は何だったのか」と思ってしまいます。

 

今回の報道を見ていて気になるのは、消費税率の引き下げを「選挙公約の実現にこだわる高市総理」という、比較的分かりやすい構図で捉えていることです。

確かに、ニュースとしてはその方が伝わりやすいでしょう。

しかし、本来議論しなければならないのは、「公約を守るか、守らないか」だけではないはずです。

消費税率を下げれば、その分だけ商品の税込価格を引き下げる効果が期待できます。その意味では、物価を下げるための非常に分かりやすい政策です。

ただ、経済はそれほど単純ではありません。

消費税率を下げることで一時的に物価負担が軽減されたとしても、そのための財源をどうするのかという問題が生じます。

財政への懸念が強まれば円安や金利などに影響する可能性もあり、それが再び物価に跳ね返ってくることも考えなければなりません。

さまざまな要素が複雑に絡み合っているのが経済ですから、「消費税を下げれば物価高対策になる」と単純に結論づけることはできないと思います。

 

もう一つ、野党などから指摘されている「2年後に本当に税率を元に戻せるのか」という問題もあります。

一度下げた税率を上げるとなれば、当然、国民から反発が起こるでしょう。

政治家にとって選挙を考えれば、「消費税を下げます」と言うことは比較的簡単ですが、「消費税を上げます」と言うことは非常に難しいものです。

そう考えると、2年間の時限措置として始めたものが、本当に予定通り終了できるのかという疑問が残ります。

さらに長期的に考えれば、少子高齢化が進み、社会保障費などが増えていく日本で、消費税収を大きく減らしたまま財政を維持できるのかという議論も避けて通れません。

だからこそ、本来は「今、物価を下げるためにどうするか」だけではなく、5年後、10年後の日本経済や財政まで考えて議論する必要があります。

 

もちろん、政治家が選挙公約を守ることは重要です。

しかし、選挙の時と経済状況や国際情勢が変わったのであれば、公約を修正することがあってもいいと思います。

その場合は、「なぜ変更するのか」を国民にきちんと説明すればいいのです。

反対に、公約を実行するのであれば、「選挙で約束したから」だけではなく、現在の経済状況でもなぜこの政策が必要なのか、その財源をどうするのか、2年後にどうするのかまで説明する必要があります。

野党についても同じです。

自分たちも選挙で消費税減税を掲げていたのであれば、政府案に反対するだけではなく、「自分たちの減税策とは何が違うのか」「今でも減税が必要だと考えているのか」を説明してもらいたいと思います。

 

ここにPRの難しさがあります。

PRでは、難しいことを分かりやすく伝えることが重要ですが、「分かりやすく伝えること」と「複雑な問題を単純化すること」は違います。

「物価が高いから消費税を下げる」「選挙で約束したから実行する」という説明は分かりやすいものの、それだけで日本経済や財政の問題を語ることはできません。

政治家には、選挙で支持を得るための公約ではなく、将来の日本を見据えた政策を示してもらいたいと思います。そしてメディアにも、単純な賛成・反対の構図にするのではなく、その政策のメリットとデメリットを国民に分かりやすく伝える役割があります。

選挙に勝つための公約ではなく、日本の将来のための公約を。

複雑な問題を単純化せず、それでも国民に分かりやすく伝え、納得してもらうこと。それこそが政治に求められるPRなのではないでしょうか。

 
 

太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」は、昭和を代表する名曲です。

私も大好きな一曲で、若い頃はよく口ずさんでいました。先日、ランニングをしながら「昭和の名曲」を聴いていたところ、この曲が流れてきました。

 

懐かしい気持ちで聴いていたのですが、不思議なことに、昔とはまったく違う感想を持ったのです。

若い頃の私は、この歌を「都会へ出た恋人が故郷を忘れ、都会で生きていくことを選び、田舎に残った女性の切ない気持ちを歌った曲」だと思っていました。

 

ところが、改めて歌詞をよく聴いてみると、少し印象が変わりました。

都会へ出た彼は、故郷の恋人を忘れたわけではありません。

プレゼントを贈り、新しい流行を伝え、離れていても彼女を喜ばせようとしています。

決して冷たく突き放しているようには思えないのです。

 

一方、彼女は都会へ行こうとはせず、「昔のあなたのままでいてほしい」と願っています。

もちろん、昭和の時代ですから、今のようにSNSやビデオ通話はありません。

連絡手段は手紙や電話くらいで、お互いの気持ちが十分伝わらなかったこともあったでしょう。

それでも、彼には彼なりの生き方があり、夢があったはずです。

その変化を受け入れようとしない彼女を見ていると、「彼のほうが少しかわいそうではないか」と思うようになったのです。

歌の最後で別れを選ぶのは彼です。

昔は「都会に染まってしまった彼が悪い」と思っていましたが、今は「価値観が変わってしまった二人には避けられない結末だったのだろう」と感じます。

 

もしかすると、このように感じたのは、最近読んだ凪良ゆうさんの『汝、星のごとく』の影響もあるのかもしれません。

この作品では、お互いを深く思い合いながらも、それぞれの事情や人生によって一緒になれない男女が描かれています。

その恋愛を読んだ後だったからこそ、『木綿のハンカチーフ』の二人は、「もう少しお互いを理解できなかったのかな」と思ってしまったのでしょう。

 

もっとも、昭和と令和では時代背景がまったく違います。

もちろん、この歌を今の価値観だけで評価するのはフェアではありません。

昭和と令和では、恋愛観も生活環境も、そしてコミュニケーションの手段も大きく違います。

情報は限られ、都会と地方の距離も今よりずっと大きかった時代です。

今ならSNSやオンライン通話で毎日のように顔を見ながら話せますし、地方にいても都会の流行はすぐに知ることができます。

 

実際「木綿のハンカチーフ」以外の昭和のヒット曲を歌詞まで読み返してみると、「これ、今だったらモラハラかな」「いや、パワハラ?」「セクハラと言われるかもしれないな」と思ってしまう歌が意外とあります。


 

年齢を重ねると、同じ歌でも主人公が違って見えたり、共感する相手が変わったりします。

昭和、平成、令和――。それぞれの時代に名曲がありますが、その変化を楽しめるのは、長く生きてきたおじさん世代の特権なのでしょう。

さて、次に昭和の名曲を聴いたら、今度はどんなツッコミを入れたくなるのか。

そんなことを考えながらランニングしている私は、歌を聴いているのか、それとも歌詞を添削しているのか、自分でもよくわからなくなっています。



 
 

~イベントを成功させるにはPRを組み合わせることが重要~


これまでこのブログでは、「広告」と「PR」の違いや、それぞれの役割について何度かお話ししてきました。

今回は、その中でも私が特に相性が良いと考えている「イベントとPR」についてお話ししたいと思います。

私はこれまで、展覧会や記者発表会、各種PRイベントなど数多くのイベントに携わってきましたが、イベントを成功させるためにはPRを組み合わせることが非常に重要だと感じています。

 

企業や自治体では、新商品発表会や周年イベント、展示会、地域イベントなど、さまざまなイベントが開催されます。

しかし、イベントは開催すること自体が目的ではありません。

本来の目的は、

  • 新商品を知ってもらう 

  • サービスを理解してもらう 

  • 企業イメージを高める 

  • 来場者を増やす 

  • 売上につなげる 

といった、その先にある成果です。

どれだけ立派なイベントを開催しても、誰にも知られなければ期待した効果は得られません。

 

イベントの魅力は、その場に来た人だけが体験できることです。

一方でPRは、そのイベントの存在や内容を、会場に来られなかった多くの人へ伝えることができます。

新聞やテレビ、WEBニュース、SNSなどを通じて紹介されれば、イベントの価値は何倍にも広がります。

つまり、

イベントが「体験」を提供するものだとすれば、PRはその体験を社会へ広げる役割を担っているのです。

 

PRの視点から見ても、イベントは非常に扱いやすいテーマです。

理由は、

  • 写真や映像になる 

  • 当日の様子が伝えやすい 

  • 登壇者への取材ができる 

  • 会場の雰囲気を記事にしやすい

など、メディアにとって取材材料が豊富だからです。

特に記者発表会では、新しい情報を発表すると同時に、担当者へのインタビューや商品撮影も行えるため、記者にとって効率の良い取材機会になります。

 

イベントでよくある失敗は、「イベントが決まってからPR会社へ相談する」というケースです。

もちろん、それでもPRはできます。

しかし、本来はイベントの企画段階からPRの視点を取り入れた方が、はるかに効果的です。

例えば、

  • どんなストーリーならニュースになるか 

  • 誰に登壇してもらうか 

  • 写真映えする演出はあるか 

  • 記者が取材しやすい進行になっているか 

こうしたことを事前に考えておけば、メディアに取り上げられる可能性は高くなります。

イベント会社はイベント運営のプロですが、PR会社は「どうすればニュースになるか」を考えるプロです。

両者が連携することで、イベントの効果は大きく変わります。

 

PRはイベント当日だけのものではありません。

例えば、

  • 開催前の告知 

  • 当日の取材誘致 

  • 開催後の実施報告 

  • イベントで撮影した写真や動画の活用

  • SNSや自社サイトでの情報発信 

など、一つのイベントから何度も情報発信できます。

イベントは一日で終わりますが、PRによってその価値を長く活用することができるのです。

 

イベントの目的によっては、広告とPRを組み合わせることも必要です。

例えば、

来場者を集めることが目的であれば、広告は非常に効果的です。

一方で、ニュースとして話題を広げたり、企業の信頼性を高めたりすることはPRの得意分野です。

どちらか一方ではなく、それぞれの特長を理解しながら組み合わせることで、より高い成果につながります。

 

イベントは、人を集めるだけでは十分ではありません。

その価値を多くの人に伝え、企業や商品の認知向上につなげてこそ、本当の成功と言えるでしょう。

そのためには、イベントの企画段階からPRを取り入れ、「どうすればニュースになるか」「どうすればメディアに興味を持ってもらえるか」という視点を持つことが重要です。

イベント会社、広告会社、PR会社、それぞれに得意分野があります。

それぞれの強みを活かしながら連携することで、イベントは単なる一日限りの催しではなく、企業や商品の価値を広く伝える大きなPRの機会になります。

イベントを予定されている企業や団体の皆さんには、ぜひ「開催すること」だけではなく、「どう伝えるか」まで含めて企画を考えていただきたいと思います。そうすることで、イベントの成果はさらに大きなものになるはずです。


 
 

著者・橘川徳夫 プロフィール

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中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

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落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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