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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~


マクドナルドの人気商品「ハッピーセット」。子供がワクワクしながら楽しめるようにと企画されたセットですが、ここ最近、付録のおもちゃをめぐって転売問題が大きな話題となりました。

5月には「ちいかわ」のおもちゃが登場し、ファンが殺到。あっという間に品切れとなり、多くがフリマサイトに出品されました。さらに先月の「ポケモンカード」では転売対策を講じたにもかかわらず、転売目的での購入が後を絶たず、結果として食品を破棄するという「食品ロス問題」にまで発展してしまいました。

 

ハッピーセットは、元々マクドナルドのオリジナル玩具を中心に展開していました。私の子供にも小さい頃にはよく買ってあげました。子供が楽しめるセットを提供することで、家族で来店してもらう─それがハッピーセットの狙いです。

玩具メーカーにとっても、自社製品を広くPRできる絶好の機会であり、マクドナルドにとっては集客効果が期待できる。まさに「三方よし」の仕組みでした。

しかし、人気キャラクターとのコラボが始まると状況は一変します。ちいかわやポケモンといった“子供だけでなく大人も欲しがるキャラクター”になると、需要は一気に膨れ上がります。その中には「転売すれば儲かる」と考える大人も現れ、結果として本来の対象である子供に行き渡らなくなってしまうのです。

 

転売の温床として名前が挙がるメルカリなどのフリマサイトも、もともとは「不用品を必要な人に届ける」ための仕組みであり、それ自体が悪いわけではありません。ただし、需要過多の商品に関しては転売ヤーのビジネスモデルとして利用されてしまっているのも事実です。

今後、一定のモラル規制やルール作りが求められるかもしれませんが、それだけで根本的な解決につながるとは考えにくいでしょう。

 

マクドナルドが人気キャラクターとのコラボを展開するのは、当然ながら売上や話題性を狙った経営判断です。オリジナルの無名な玩具に戻せば転売問題は落ち着くかもしれませんが、同時に売上や認知度アップの機会を失うことになります。企業としては、どうしても「売れるものを企画する」方向に動くのは自然なことです。

つまり、「売れるキャラクターを使えば転売が増える」「オリジナル玩具にすれば売上が落ちる」という矛盾を抱えており、このジレンマを解決するのは容易ではありません。

 

先日、マクドナルドがハッピーセットの転売対策として、大量注文を行うアカウントの利用停止などの措置を講じることを発表しました。今回の問題の一番の原因は「転売ヤー」です。彼らの目的はほとんどが金儲けであり、子供の楽しみは二の次になってしまっています。

マクドナルドやフリマサイトだけに責任を求めても限界があり、法律的な規制や社会的なルールづくりが必要なのかもしれません。ただし、今回の措置だけで根本的な問題が解決できるとは思えません。


ハッピーセットは「子供の小さな楽しみ」の象徴です。その楽しみを大人の欲や金儲けが奪うようなことは、できる限り防いでいかなければならないでしょう。

 
 

前回のコラムでは、再生可能エネルギーの課題を切り口に、原子力発電のPRについて触れました。今回は少し視点を変え、日本がなぜ原子力発電を推進してきたのか、その背景と現状の課題についてお話しします。

 

日本は、石油や天然ガス(LNG)、石炭といった主要な化石燃料の国内資源をほとんど持ちません。かつての炭鉱もほぼ掘り尽くされ、世界的に見ても採掘条件の良い鉱脈は残っていません。さらに、火力発電はゼロカーボン政策の観点からも将来性が限定的です。

「水が豊富な国」というイメージから水力発電を思い浮かべる方も多いですが、発電に必要な規模の水量で見れば、日本は世界的にそれほど恵まれていません。こうした背景から、日本はエネルギーの安定供給を目指し、原子力発電に着目しました。

 

原子力発電は、少量のウランで非常に大きな電力を生み出せるため、当時は費用対効果が極めて高いエネルギー源とされていました。しかも、使用済み核燃料を再処理すれば再び利用でき、自国でエネルギーを循環させることも理論上可能です。

さらに、日本が進めた「高速増殖炉」は、発電と同時に燃料を増やせるという“夢の原子炉”と呼ばれ、資源の乏しい日本にとってはまさに理想的なシステムでした。そのため、「再処理システム」と「高速増殖炉」は、原子力政策の両輪として長年推進されてきたのです。

 

しかし、現実は理想通りには進みませんでした。高速増殖炉「もんじゅ」は巨額の予算を投じたにもかかわらず、度重なるトラブルで廃炉に。六ケ所村の再処理工場も、いまだ稼働には至っていません。

世界的にはゼロカーボンの流れから原子力を再評価する動きが広がる中、日本はこの二本柱を失ったことで、原子力政策自体が迷走状態に陥っています。その結果、かつては「自国エネルギーの確保」が主目的だった原発推進の理由が、「ゼロカーボン」という環境面の理由に置き換わってきました。

 

コストや地球温暖化の観点から見れば、原子力発電は有効な選択肢のひとつです。しかし、安全性の問題は避けられず、再生可能エネルギーの方が望ましいと考える国民も少なくありません。

結局のところ、原子力政策が国として明確に定まらない限り、原子力推進のPRは難しいままです。あいまいな方針で進めれば、「再エネを軽視して原発を押し進めている」という批判だけでなく、「安全性を軽視しているのではないか」という不安も国民の中に広がります。こうした疑念は、原子力そのものへの不信感を強め、逆にマイナスイメージを助長してしまいます。

もし国が本気で原子力発電を進めたいのであれば、まずは国民が納得できる、わかりやすく一貫性のある原子力政策を示すことが先決です。それなくしては、どんなに巧みなPR戦略を立てても、信頼は得られないでしょう。

 
 

このブログを始めてから1年が経ったことをご報告しました。(参考:https://www.windam.co.jp/post/1-year-has-passed)

実はブログ読者を増やすために、X(旧Twitter)のアカウントも開設し、記事を紹介する投稿を始めました。最初は「ブログを更新したらXにも投稿する」という形だったので、必然的に毎日投稿するわけではありませんでした。

しかしSNS、特にXは「発信しなければフォロワーは増えない」媒体です。思うような拡散が得られなかったため、思い切って毎日投稿することを目標に掲げて取り組み始めました。気づけばその挑戦も1年以上続いています。今回は、その振り返りをお話ししたいと思います。

 

最初に決めたのは、フォロワー数や“いいね”の数を目標にしないことでした。なぜなら、それらは自分でコントロールできないからです。「結果」ではなく「行動」を目標にすることで、達成感を積み重ねていけると考えました。

毎日投稿を続ければフォロワーも増えるだろうと予想していましたが、実際にはそう簡単ではありませんでした。当初は30フォロワーくらいでしたが、何かをきっかけに一時100フォロワーに近づき、100を超えられると思ったのですが、その後は減少し、ここ数か月は50名前後で安定しています。

 

次に着目したのは、投稿がどれだけ見られているかを示すインプレッション数でした。当初はフォロワー数を超えることがなかったのですが、途中から安定してフォロワー数以上の数値が出るようになりました。

きっかけは、投稿内容の変化です。当初は「ニュース記事をPR会社の視点で解説する」形式で投稿していました。しかし、良い記事を見つけるのに手間がかかり、さらに内容をPR視点に寄せようとすると、どうしても時間をとられてしまう。その結果、無理やり作っているような不自然さが出てしまい、自分でも続けにくさを感じていました。

そこでスタイルを変え、“おじさん目線”で世の中のニュースや他の人の投稿にコメントするようにしました。

すると、ある投稿でフォロワー数の数十倍のインプレッションを獲得。これを境に、スポーツや芸能など世間の関心が高い話題を取り入れることで、平均してフォロワー数の5倍以上のインプレッションを得られるようになりました。

この経験を踏まえて、インプレッション数を新たな目標に設定しました。

  • 1週間の合計インプレッション数をフォロワー数の35倍以上(=1日あたり約5倍)

  • 1投稿あたり、フォロワー数の4倍以上

このように「投稿数を増やせば達成可能」という、自分でコントロールできる数値にしました。結果として、この目標は半年以上継続的に達成でき、できなかったのは数週間程度にとどまります。

 

Xで投稿を続けていると、どうしてもフォロワー数やインプレッション数といった数字が気になってしまいます。SNSは数字が顕著に表れる媒体なので、「意識するな」と言っても無理があるのだと思います。

それでも、やめてしまうのはせっかく積み重ねてきたものがもったいない――そう感じたからこそ、この1年間投稿を続けてきました。

次回は、1年間毎日投稿を続けてきた中で、私なりに気づいた「どんな投稿が効果を生むのか」についてお話ししたいと思います。

 
 

著者・橘川徳夫 プロフィール

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中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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