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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~


太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」は、昭和を代表する名曲です。

私も大好きな一曲で、若い頃はよく口ずさんでいました。先日、ランニングをしながら「昭和の名曲」を聴いていたところ、この曲が流れてきました。

 

懐かしい気持ちで聴いていたのですが、不思議なことに、昔とはまったく違う感想を持ったのです。

若い頃の私は、この歌を「都会へ出た恋人が故郷を忘れ、都会で生きていくことを選び、田舎に残った女性の切ない気持ちを歌った曲」だと思っていました。

 

ところが、改めて歌詞をよく聴いてみると、少し印象が変わりました。

都会へ出た彼は、故郷の恋人を忘れたわけではありません。

プレゼントを贈り、新しい流行を伝え、離れていても彼女を喜ばせようとしています。

決して冷たく突き放しているようには思えないのです。

 

一方、彼女は都会へ行こうとはせず、「昔のあなたのままでいてほしい」と願っています。

もちろん、昭和の時代ですから、今のようにSNSやビデオ通話はありません。

連絡手段は手紙や電話くらいで、お互いの気持ちが十分伝わらなかったこともあったでしょう。

それでも、彼には彼なりの生き方があり、夢があったはずです。

その変化を受け入れようとしない彼女を見ていると、「彼のほうが少しかわいそうではないか」と思うようになったのです。

歌の最後で別れを選ぶのは彼です。

昔は「都会に染まってしまった彼が悪い」と思っていましたが、今は「価値観が変わってしまった二人には避けられない結末だったのだろう」と感じます。

 

もしかすると、このように感じたのは、最近読んだ凪良ゆうさんの『汝、星のごとく』の影響もあるのかもしれません。

この作品では、お互いを深く思い合いながらも、それぞれの事情や人生によって一緒になれない男女が描かれています。

その恋愛を読んだ後だったからこそ、『木綿のハンカチーフ』の二人は、「もう少しお互いを理解できなかったのかな」と思ってしまったのでしょう。

 

もっとも、昭和と令和では時代背景がまったく違います。

もちろん、この歌を今の価値観だけで評価するのはフェアではありません。

昭和と令和では、恋愛観も生活環境も、そしてコミュニケーションの手段も大きく違います。

情報は限られ、都会と地方の距離も今よりずっと大きかった時代です。

今ならSNSやオンライン通話で毎日のように顔を見ながら話せますし、地方にいても都会の流行はすぐに知ることができます。

 

実際「木綿のハンカチーフ」以外の昭和のヒット曲を歌詞まで読み返してみると、「これ、今だったらモラハラかな」「いや、パワハラ?」「セクハラと言われるかもしれないな」と思ってしまう歌が意外とあります。


 

年齢を重ねると、同じ歌でも主人公が違って見えたり、共感する相手が変わったりします。

昭和、平成、令和――。それぞれの時代に名曲がありますが、その変化を楽しめるのは、長く生きてきたおじさん世代の特権なのでしょう。

さて、次に昭和の名曲を聴いたら、今度はどんなツッコミを入れたくなるのか。

そんなことを考えながらランニングしている私は、歌を聴いているのか、それとも歌詞を添削しているのか、自分でもよくわからなくなっています。



 
 

~イベントを成功させるにはPRを組み合わせることが重要~


これまでこのブログでは、「広告」と「PR」の違いや、それぞれの役割について何度かお話ししてきました。

今回は、その中でも私が特に相性が良いと考えている「イベントとPR」についてお話ししたいと思います。

私はこれまで、展覧会や記者発表会、各種PRイベントなど数多くのイベントに携わってきましたが、イベントを成功させるためにはPRを組み合わせることが非常に重要だと感じています。

 

企業や自治体では、新商品発表会や周年イベント、展示会、地域イベントなど、さまざまなイベントが開催されます。

しかし、イベントは開催すること自体が目的ではありません。

本来の目的は、

  • 新商品を知ってもらう 

  • サービスを理解してもらう 

  • 企業イメージを高める 

  • 来場者を増やす 

  • 売上につなげる 

といった、その先にある成果です。

どれだけ立派なイベントを開催しても、誰にも知られなければ期待した効果は得られません。

 

イベントの魅力は、その場に来た人だけが体験できることです。

一方でPRは、そのイベントの存在や内容を、会場に来られなかった多くの人へ伝えることができます。

新聞やテレビ、WEBニュース、SNSなどを通じて紹介されれば、イベントの価値は何倍にも広がります。

つまり、

イベントが「体験」を提供するものだとすれば、PRはその体験を社会へ広げる役割を担っているのです。

 

PRの視点から見ても、イベントは非常に扱いやすいテーマです。

理由は、

  • 写真や映像になる 

  • 当日の様子が伝えやすい 

  • 登壇者への取材ができる 

  • 会場の雰囲気を記事にしやすい

など、メディアにとって取材材料が豊富だからです。

特に記者発表会では、新しい情報を発表すると同時に、担当者へのインタビューや商品撮影も行えるため、記者にとって効率の良い取材機会になります。

 

イベントでよくある失敗は、「イベントが決まってからPR会社へ相談する」というケースです。

もちろん、それでもPRはできます。

しかし、本来はイベントの企画段階からPRの視点を取り入れた方が、はるかに効果的です。

例えば、

  • どんなストーリーならニュースになるか 

  • 誰に登壇してもらうか 

  • 写真映えする演出はあるか 

  • 記者が取材しやすい進行になっているか 

こうしたことを事前に考えておけば、メディアに取り上げられる可能性は高くなります。

イベント会社はイベント運営のプロですが、PR会社は「どうすればニュースになるか」を考えるプロです。

両者が連携することで、イベントの効果は大きく変わります。

 

PRはイベント当日だけのものではありません。

例えば、

  • 開催前の告知 

  • 当日の取材誘致 

  • 開催後の実施報告 

  • イベントで撮影した写真や動画の活用

  • SNSや自社サイトでの情報発信 

など、一つのイベントから何度も情報発信できます。

イベントは一日で終わりますが、PRによってその価値を長く活用することができるのです。

 

イベントの目的によっては、広告とPRを組み合わせることも必要です。

例えば、

来場者を集めることが目的であれば、広告は非常に効果的です。

一方で、ニュースとして話題を広げたり、企業の信頼性を高めたりすることはPRの得意分野です。

どちらか一方ではなく、それぞれの特長を理解しながら組み合わせることで、より高い成果につながります。

 

イベントは、人を集めるだけでは十分ではありません。

その価値を多くの人に伝え、企業や商品の認知向上につなげてこそ、本当の成功と言えるでしょう。

そのためには、イベントの企画段階からPRを取り入れ、「どうすればニュースになるか」「どうすればメディアに興味を持ってもらえるか」という視点を持つことが重要です。

イベント会社、広告会社、PR会社、それぞれに得意分野があります。

それぞれの強みを活かしながら連携することで、イベントは単なる一日限りの催しではなく、企業や商品の価値を広く伝える大きなPRの機会になります。

イベントを予定されている企業や団体の皆さんには、ぜひ「開催すること」だけではなく、「どう伝えるか」まで含めて企画を考えていただきたいと思います。そうすることで、イベントの成果はさらに大きなものになるはずです。


 
 

先日、作家の東野圭吾さんが亡くなったというニュースが流れました。

私は東野さんの本を50冊以上は読んでいる大ファンなので、このニュースには本当に驚きました。

 

東野作品の魅力はいろいろありますが、その一つは理系出身ならではの発想だと思います。「ガリレオ」シリーズでは科学的なトリックを使いながら、それを難しく感じさせず、エンターテインメントとして面白く読ませてくれます。

一方、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』や「クスノキ」シリーズでは不思議な出来事を交えながら人と人とのつながりを描き、「ラプラスの魔女」シリーズでは科学と超常的とも思える現象を少しシリアスに描いています。

 

そして、私が東野作品の中で最も感動したのが『手紙』です。

犯罪を犯した加害者本人だけでなく、その家族が背負わなければならないものを描いた作品で、読んだ後にいろいろなことを考えさせられました。

東野作品には、事件の謎を解くことだけを目的とするのではなく、被害者や加害者、その家族など、それぞれの立場から人間を描いた作品が数多くあります。

誰が正しくて誰が間違っていると簡単には割り切れない、人間の弱さや矛盾、そしてそれでも生きていかなければならない人たちの姿が描かれていて、読むたびに考えさせられます。

ミステリーとして面白いだけでなく、その奥に人間というものを深く考えさせるテーマがあることも、私が東野作品を読み続けてきた理由なのだと思います。

 

また、私にとって特に親しみがあるのが、加賀恭一郎を主人公とする「新参者」です。舞台が弊社のある日本橋人形町だったため、ドラマの撮影を何度か目撃したこともあり、とても身近に感じた作品です。

加賀恭一郎も、単に事件を解決する名探偵ではなく、人間味がありながら鋭い観察眼を持った魅力的な人物です。

 

東野さんの作品は、数多く映画化、テレビドラマ化されています。

小説を読んでから映像作品を見ると、自分が想像していた世界との違いに違和感を覚えることもありますが、東野作品は比較的原作の世界観を大切にしているものが多いように感じます。

 

そして、ここから少しPRの話になります。

小説が映画やドラマになれば、それまで作品を知らなかった多くの人にも、その作品が描いている世界を知ってもらうことができます。つまり、小説や映像作品という「物語」は、大きなPRの力を持っているということです。

 

例えば、「ガリレオ」を読んだりドラマを見たりして、「物理学者って格好いい」と感じ、物理学に興味を持った若者がいるかもしれません。東野さんはスノーボードを題材にした作品も書いていますが、それを読んでスノーボードの魅力を知った人もいるでしょう。

「物理学は面白い」「スノーボードは楽しい」と直接説明するより、面白い物語の中でその世界に触れた方が、自然に興味を持ってもらえることがあります。

これはPRにとって、とても重要なことだと思います。

 

ただ、「PRしたいから小説を作ろう」と考えても、そう簡単にはいきません。まず作品そのものが面白くなければ読んでもらえませんし、映画化やドラマ化にもつながりません。

PRありきで物語を作るのではなく、まずコンテンツとして面白い。その結果として多くの人に届き、そこに描かれた世界にも興味を持ってもらえる。

そういう意味でも、科学からスポーツ、そして人間の弱さや社会が抱える難しい問題までを魅力的な物語として描き、多くの人に届けてきた東野圭吾さんは、やはり一流の作家だったのだと改めて感じます。

 

今回の訃報は、私にとって本当に悲しい知らせでした。68歳であれば、まだまだ新しい作品を読むことができると思っていただけに、もう新作を読めないことが残念でなりません。

PRとは、「知らなかったことを知ってもらうこと」「新しいことに気づいてもらうこと」でもあります。

東野さんの作品は、知らなかった世界を知るだけでなく、自分とは違う立場の人の人生や気持ちについて考える「気づき」も与えてくれました。

そう考えると、「物語が人に何かを伝える力」は、PRにも通じるものがあるのかもしれません。


これまで数多くの素晴らしい作品を世に送り出していただき、本当にありがとうございました。

一人のファンとして心より感謝するとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします。

 
 

著者・橘川徳夫 プロフィール

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中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

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落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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