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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

~メディアの第三者評価が営業の信頼につながる~


以前このPR講座で、営業も広い意味ではPRの一つの方法だというお話をしました。

企業が売上を上げるためには、商品やサービスを知ってもらい、興味を持ってもらい、最終的に購入してもらう必要があります。

その意味では営業も広告もPRも目的は同じですが、それぞれ得意な役割が違います。

今回は、営業活動を強化する補助策としてのPRについて考えてみたいと思います。

 

営業担当者が新規の会社を訪問した際、相手が自社のことをまったく知らなければ、

「何の会社だろう?」「信用できる会社なのだろうか?」

というところから説明しなければなりません。

一方、「この会社、新聞で見たことがある」「この商品、ニュースで紹介されていた」

となれば、営業のスタート地点は大きく変わります。

PRによって「知らない会社」から「知っている会社」にしておくことは、営業活動を進めるうえで大きなプラスになります。

 

もう一つ、PRが営業に効果を発揮する大きな理由が第三者からの評価です。

営業担当者が、「当社の商品は素晴らしいです」「他社より優れています」

と言うのは当然です。

しかし、それだけでは相手からすれば「自分の商品だからそう言っているのだろう」と思われても仕方ありません。

 

それに対して、新聞やテレビ、WEBニュースなど社会的に信用のあるメディアが商品やサービスを取り上げれば、受け取る側の印象は変わります。

自社から発信する情報だけでなく、第三者であるメディアを通じて紹介されることで、商品や企業に対する信用を高めることができる。

これは広告や営業とは違う、PRの大きな強みだと思います。

 

掲載された記事を営業資料として活用し、「先日、○○新聞でも紹介されました」

と商談で見せることもできます。

PRによるメディア掲載は、その時だけの情報発信ではなく、その後の営業活動にも活用できるのです。

 

特にBtoB企業の場合、営業先がある程度決まっていることが多いため、PRだけで売上を上げようとするよりも、営業を中心に考えた方が販売には直接つながりやすいでしょう。

だからといってPRが必要ないわけではありません。

営業担当者が訪問する前に企業名や商品を知ってもらったり、メディア掲載によって信頼感を高めたりすることができれば、営業活動を側面から支えることができます。

営業でターゲットに直接アプローチし、PRで認知と信用をつくる。

この組み合わせが重要なのだと思います。

 

PRをしたからといって、翌日から商品がどんどん売れるわけではありません。

PRは営業に代わって商品を売るものではなく、営業担当者が売りやすい環境をつくるものと考えた方が分かりやすいでしょう。

営業活動を強化しようとすると、人員を増やしたり、訪問件数を増やしたりすることを考えがちです。

 

しかし、「営業担当者がもっと売りやすくなるにはどうすればいいのか」という視点から考えれば、企業や商品の認知を高め、第三者からの信用を得るPRも有効な方法です。

営業だけで売上を伸ばそうとするのではなく、営業を後押しするPRを組み合わせる。

営業強化を考えている企業には、ぜひ一度検討していただきたい方法です。

 
 


先日のPRコラムで「推し活時代のPR」について書きました。

みんなが同じテレビ番組を見て、同じ芸能人やニュースを知っている時代から、それぞれが自分の「推し」を持ち、好きなものを深く追いかける時代になったという話です。

 

その原稿を書きながら、ふと思いました。

「そういえば、自分には“推し”と呼べるほど詳しいものがあるのだろうか?」と。

仕事であるPRについては、まあ詳しいほうだと思います。でも、それ以外で「これなら誰にも負けません」と言えるものは、なかなか思いつきません。

その代わり、自慢ではありませんが、私はいろいろなことを人より幅広く知っているほうだと思っています。

仕事でも、広報やマーケティング、営業だけでなく、経理、財務、情報システム、労務などにも関わり、知識だけでなく実務もやってきました。

今の時代は、一つの分野を極めたスペシャリストが評価されます。「何でもやります」という人間は、少々流行遅れなのかもしれません。

 

でも、中小企業では、こういう人間が意外と役に立つと思っています。

大企業なら経理、人事、システムなど、それぞれに専門部署がありますが、中小企業はそうはいきません。一人で複数の仕事を担当したり、誰かが困っていれば別の人が補ったりする必要があります。

一つのことだけでなく、会社全体の仕事がある程度分かることは、大きな強みになります。

自分で言うのも変ですが、振り返ってみると、私は知らないうちに「中小企業の経営者向き」の能力を身につけてきたのかもしれません。

趣味や世の中の情報についても同じです。

野球も駅伝もサッカーも観ます。本も読みますし、美術、政治、経済、芸能、ITなどにも興味があります。

ただし、どれも専門家ほど詳しくありません。

昔なら、テレビや新聞を見ていれば多くの人と共通の話題を持つことができ、「物知りですね」と言ってもらえることもありました。

 

ところが今は、ネットやSNSによって、それぞれが好きな分野を深く知る時代です。私程度の雑学なら、スマホで検索すれば数秒で出てきます。

おじさんの「広く浅い知識」の価値も、ずいぶん下がってしまいました。

それでも、いろいろなことを知っているからこそ、違う分野を結びつけて考えたり、「このやり方は別の仕事にも使えるのではないか」と発想したりできます。

スペシャリストが必要なのは間違いありませんが、いろいろなことを知り、それをつなげる人も必要なのではないでしょうか。

特に中小企業では、なおさらだと思います。

 

……と、ここまで書くと、ずいぶん自分を褒めてしまいました。

ただし、「何でもできる」ことには大きな欠点があります。

誰かに説明して頼むくらいなら、「自分でやったほうが早い」と、ついつい自分でやってしまうのです。

その結果、仕事はどんどん自分のところに集まってきます。

「何でもできる経営者」になる前に、まずは「人に任せることができる経営者」にならなければいけないようです。

私にとっては、こちらのほうがスペシャリストになるより難しいかもしれません(笑)。



 
 

ウインダムでは、人気アニメの展覧会のPRを担当することがあります。

先日、たまたまそのアニメが大好きだという若い人と仕事をする機会があり、「展覧会のPRに関われてうれしい」と、とても喜んでもらえました。

その人と話をしていて驚いたことがあります。

そのアニメは映画化もされているのですが、なんと同じ映画を5回も観に行ったというのです。

私は、同じ映画を2回観ることすらほとんどありません。テレビで以前観た映画が放送されていても、もう一度観ようとはあまり思いません。

読書も趣味ですが、一度読んだ小説をもう一度読むことはほぼありません(ビジネス書などは別ですが…)。

ストーリーが分かっているものを何度観ても、何度読んでも結果がわかっているので、つまらないのではないかというのが私の感覚だからです。

 

ところが、その人の話を聞いていると、何度も観る理由が少し分かってきました。

いわゆる「推し」がいる人たちは、単にストーリーを楽しんでいるだけではありません。

「あの場面は、後のこの場面への伏線だった」「背景にこんなものが描かれていた」「このセリフには別の意味があるのではないか」など、作品の細部まで観ているそうです。

そして、自分が発見したことや気づいたことを、同じ作品が好きな人たちとSNSなどで共有します。

誰かの投稿を見て「そんなところまで観ていなかった」と思えば、もう一度作品を観て確かめたくなる。さらに新しい発見があれば、それをまた誰かに伝えたくなる。

なるほど、それなら同じ映画を5回観ることも理解できます。

私にも似たような経験があります。

例えばドラマを普通に観ていて、後から情報番組やネットなどで「あの場面にはこんな意味があった」「以前のシーンがここにつながっていた」と解説されると、「そんなところまで全く気づかなかった」と思うことがあります。

作品は一度観れば終わりではなく、「発見する」「考察する」「誰かと共有する」ことまで含めて楽しむものになっているのでしょう。

 

これはPRを考えるうえでも非常に興味深いことです。

かつては、できるだけ多くの人に知られている「国民的人気」の作品ほど、展覧会などでも集客しやすいと考えられていました。

もちろん知名度は今でも重要ですが、必ずしもそれだけではないようです。

幅広く知られている作品より、ファンの絶対数はそれほど多くなくても、非常に熱量の高い「推し」を持つファンがいる作品のほうが、何度も会場を訪れたり、グッズを購入したり、SNSで積極的に情報を発信したりすることがあります。

つまり、「何人が知っているか」だけではなく、「どれだけ強く好きな人がいるか」も大きな価値になっているのです。

しかも、推し活をする人たちは単なる消費者ではありません。

自分で作品の魅力を見つけ、それを発信し、別のファンが共感して、さらに情報が広がっていく。ある意味では、ファン自身がPRの担い手になっているとも言えます。

 

私は、いわゆる「推し活」をした経験がほとんどありません。

そのため、「なぜ同じ映画を5回も観るのか」というところから理解しなければならなかったわけですが(笑)、今回話を聞いたことで、今の消費行動について少し分かったような気がします。

PRする側が「この作品は人気があります」「こんなに面白い作品です」と一方的に情報を発信するだけでは、推し活の熱量を十分に生かすことはできません。

ファンは何に魅力を感じ、何を発見したくて、何を誰かと共有したいのか。

そうした「推す人の心理」まで理解してPRを考えることが、これからますます重要になるのでしょう。

今や「推し」は、消費だけでなく情報まで動かす存在になっています。

となると、マーケティングやPRに携わる人間も、推し活について勉強するだけでは足りないのかもしれません。

 

マーケティングに携わるなら、一度くらい夢中になれる「推し」を見つけてみたほうが、今の消費者心理を理解する近道になるのかもしれませんね(笑)。

 
 

著者・橘川徳夫 プロフィール

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中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

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落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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