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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~


先日、ついに新しいスマホに買い替えました。

画面は割れて見づらいし、電池もすぐ切れるし、周りからは「社長なのにそんなの使っているんですか?」と笑われる始末。さすがに限界を感じたのです。


ところが、本当に大変だったのは買い替え手続きよりも、その後に待っていた「パスワード地獄」でした。数字、英字、大文字、記号の組み合わせで、サービスごとに違うパスワードを設定しなければならない。覚えられるわけがありません。

結局、メモを取っておくしかないのですが、中にはメモを忘れてしまうケースもあり、「あれ、パスワード何にしたっけ?」と結局パスワードを問い合わせる羽目になるのです。


今回一番焦ったのはLINEでした。

私の場合、パスワードを使うのはスマホを替える時くらいなので、数年前に控えていなかったことを大後悔。アカウントが移せず冷や汗をかきました。

最後はなぜか移行できましたが、どのパスワードが正解だったのか未だに謎です。次の買い替えが怖いくらいです。


もちろん、セキュリティの大切さは理解しています。個人情報が流出して犯罪に使われるニュースを見れば納得です。でも、便利になるはずの技術が、逆に不便を増やしているのでは?とも感じてしまいます。


おじさんとしては「パスワードなしで安全に使える社会」が来てほしいと願っていますが、現実はそう甘くないのでしょう。泥棒や悪人がいる限り、仕方ないのかもしれません。


それにしても――私のように四苦八苦しているおじさんがいる一方で、若い人たちはどうやっているのでしょうか。

パスワード管理アプリでも使いこなしているのか、それともそもそも発想が違うのか。おじさんの知らない「便利なやり方」があるのなら、ぜひ教えてほしいものです。

パスワードの設定に悪戦苦闘するおじさん
パスワードの設定に悪戦苦闘するおじさん

 
 

夏といえば、花火大会、夏祭り、音楽フェス……。多くの人にとって季節の楽しみであり、地域の恒例行事として長年続いてきたイベントが目白押しです。人気が高く来場者数も多い分、「中止」や「日程変更」はよほどのことがない限り判断しにくいのが現実です。

しかし、今年の夏は異常な暑さにより、さすがに開催の有無を検討した主催者もあったのではないでしょうか。とはいえ、直前に中止を決めるのは難しく、結局ほとんどのイベントが予定通り実施されたように思います。

 

花火大会やフェスが天候で中止になった際、「翌日や翌週に順延すればいいのでは?」という声を聞くことがあります。しかし、実際には警備費用や人件費の問題があってほぼ不可能です。

花火大会で必要なのは花火師だけではありません。来場者の安全を守るため、多くの警備員や案内スタッフが必要になります。2001年の明石市の花火大会事故以降、警備体制は大幅に強化されており、来場者が増えれば増えるほど費用も膨らみます。中止になったからとはいっても、人員を確保すれば、その費用は発生します。さらに、順延での開催となればスタッフを追加で確保する必要があり、その費用再度かかるため、ほぼ倍の予算となり、多くの主催者にとって、そんな予算は確保できません。

さらに、この猛暑では熱中症対策のために医師や看護師の配置、水の配布、冷房施設の設置など、追加コストも発生します。屋外イベントは天候に大きく左右されるため、主催者は常に天気予報とにらめっこ状態です。

 

「イベント保険」という仕組みもありますが、すべての損失を補償しようとすれば保険料は非常に高額になります。結果的に、多くの主催者はリスクを承知の上で開催日を設定し、あとは祈るしかないのが実情です。

雨の少ない季節に開催時期を変更するという選択肢もありますが、夏ならではの集客効果や雰囲気を考えると、簡単には踏み切れません。

 

PRの観点からすると、夏の屋外イベントは絶好の話題づくりの場です。地域の魅力を発信し、ニュースやSNSで多くの人の関心を集めることができます。しかし、中止になればその効果はゼロ。取材対応も天候や暑さに左右され、準備の労力に見合わないこともしばしばです。

先日、あるイベント会社の制作担当者に「屋外イベントやっていますか?」と尋ねたところ、返ってきた答えは一言、「死んじゃいます」。この酷暑の中では、企画・運営側も参加者もメリットよりリスクのほうが大きくなってしまいます。

 

夏の屋外イベントは、地域にとってもPRにとっても魅力的な素材です。しかし、ここまで暑さが厳しいと、実施そのものを再考すべき時期に来ているのかもしれません。

PRに携わる者としては寂しい思いもありますが、安全と持続性を考えれば、時には「やらない勇気」も必要だと感じています。

 
 

60歳で保険料の支払いが終わったため、生命保険の特約部分の保障がなくなりました。終身保障だけでは少し心もとないので、万が一に備えた死亡保障の保険に新たに加入することにしました。

保険共済やテレビCMで有名なネット保険などいろいろ検討しましたが、「医療保障はいらない」「最低限の死亡保障だけ」というニーズに合う保険は意外と見つかりません。そんな中、保険代理店をしている知人に、元保険営業だった私の希望を伝えたところ、ぴったりのプランを提示してもらい、スムーズに契約まで進みました。

うん、やっぱり分かってる人は話が早い!

 

実は、妻の医療保険の相談で、近所の保険ショップに行ったときにこんなことがありました。こちらは「あの保険に入りたい」と目的まで決めているのに、ショップの方はマニュアル通りの質問を延々と繰り出し、「保険に何を求めていますか?」「どんなことがご不安ですか?」……って、こっちが保険の説明してあげたいくらいだと思いました(笑)

もちろん、保険ってあとで「聞いてない!」というトラブルも多いので、丁寧な説明が必要なことはわかります。でも、知ってる人にまで、何もかもゼロから説明するというスタンスには、ちょっとモヤモヤするわけです。

 

これって実は、PRの話にも通じます。PRって、「ちゃんと説明したか」よりも「ちゃんと伝わったか」が大事なのです。知らない人には丁寧に、知ってる人には要点だけ──それが“伝える力”ってもんです。

にもかかわらず、最近は“誰にでも同じ説明をすること”がコンプライアンスの証、みたいな風潮になっています。でもそれって、逆に「相手のことをまったく見てないですよ」って宣言してるようなもんじゃないですか?

たとえばラーメン屋に行って、「麺は小麦粉でできています」って言われたらビックリしますよね?「知ってるわ!」ってツッコミ入れたくなります。

それと同じで、“わかってるおじさん”にも延々と説明してくる現代の制度は、ちょっとばかり窮屈です。


今回の保険加入で感じたのは、「伝えることは、相手の理解度を想像すること」ということです。これはPRの世界にもまるっと当てはまります。

「知らない人に何をどう伝えるか」と同じくらい、「知ってる人にどこまで省略して話すか」も大切な技術だと思います。

私たちPR業界の人間は、情報を届けるだけでなく、“どう届けるか”の工夫こそ問われているんだと思います。

ちなみに今回入った保険は、保障も保険料も想定以上に納得のいくものでした。


やっぱり“知ってる”というのは、強いですね!


そして、相手が何を知っているかを“察する力”が、今の時代のPRには求められているのかもしれません。


長々と保険の説明をするのはわかるのですが、やっぱりイラつきますよね!
長々と保険の説明をするのはわかるのですが、やっぱりイラつきますよね!

 
 

著者・橘川徳夫 プロフィール

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中央大学経済学部卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、2001年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わってきた。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングがクライアントに好評を博している。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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