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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

【PR特別講座】「無料」は最強の武器か、それとも諸刃の剣か

~価格戦略がブランドを左右する~


PRや広告キャンペーンを企画する際、「無料」という言葉は非常に強力な武器になります。

利用者にとって“メリットが明確”であり、情報としての価値が高いため、記事掲載につながる可能性も高くなります。メディアにとっても、読者・視聴者にメリットのある情報は歓迎されるからです。

 

たとえば、読者プレゼント企画。

  • 企業は商品を提供する

  • メディアは読者サービスとして紹介する

  • 読者は無料で商品を受け取れる

それぞれにメリットがあるため、掲載につながりやすい仕組みになっています。

このように、「無料」はPRの世界ではよく使われる手法であり、PR会社でも企画として提案することは少なくありません。

 

ただし、この手法にはリスクもあります。

あまり頻繁に「無料」や「大幅割引」を打ち出すと、ブランド価値が下がってしまう可能性があります。

街角で「閉店セール」の看板を見かけることがあると思います。閉店だからこそ“今だけ”という特別感があるのに、翌月もまた「閉店セール」が行われている…。こうなると、消費者は次第に気づきます。「本当に閉店するわけではない」と。

結果として、セールのインパクトは弱まり、通常価格への信頼も低下していきます。

 

価格は、購買行動において非常に重要な要素です。

一度「無料」や大幅割引を経験した顧客は、その価格を基準(アンカー)にしてしまいます。

もし通常価格で提供したときに、「その価値がない」と感じられれば、“無料だったときの価格”が基準になり、定価が高く感じられてしまいます。

つまり、無料キャンペーンは、その後の価格イメージを左右する可能性があるのです。

 

無料キャンペーンを企画するのであれば、まず自社の製品・サービスが、本来の価格に見合う価値を持っているかどうかを確認する必要があります。

「無料だから試す」という入り口は有効ですが、「有料でも使いたい」と思ってもらえなければ、単なる一時的な集客で終わってしまいます。

 

私は、「無料」や「割引」は、何度も繰り返すよりも、戦略的に1回使う方がPR効果は高いと考えています。

効果が高いからといって多用すれば、その価格が当たり前になり、ブランドの価値が薄れていきます。

むしろ、

  • 自社の価値を知ってもらうきっかけ

  • 新規顧客との接点づくり

  • 話題づくり

として活用するのが望ましいでしょう。

 

「無料」は確かに強力なPR手法です。しかし、強い武器ほど使い方を誤ると自分を傷つけます。

価格はブランドそのもの。その価格をどう扱うかは、PR戦略に大きく影響します。

無料キャンペーンを実施する前に、ぜひ一度、自社の価値と価格のバランスを見直してみてください。

“安さ”で選ばれるのか、

“価値”で選ばれるのか。

PRは、その選択を社会にどう伝えるかという戦略でもあるのです。


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著者・橘川徳生 プロフィール

中央大学経済学部を卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、1990年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わる。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案し。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングが好評を得ている。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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