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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

【PRコラム】大阪万博が開幕。盛り上がらない理由をPRの視点から考える

大阪万博が、ついに開幕しました。テレビや新聞でも大きく取り上げられ、世間の注目を集めていることでしょう。※とはいえ、実はこの原稿は開幕前に執筆しているため、万が一、想定ほど盛り上がっていなかった場合はご容赦ください。


1970年に開催された前回の大阪万博の際、私はまだ小学生にもなっておらず、当然のことながら会場へは行きませんでした。ただ、父が万博会場に足を運び、お土産を買ってきてくれたことは今でもよく覚えています。あの頃の万博には、「世界中の技術を結集したすごいイベント」という印象が強くありました。日本も高度経済成長期の真っただ中で、「海外に追いつき、追い越す」といった意識が社会全体にあった時代です。万博は、技術と未来への憧れを象徴する場でもあったのではないかと思います。


一方、今回の万博は、開催決定の初期段階から「本当に必要なのか」といった否定的な報道が目立ちました。その結果、開催に対するポジティブなイメージが浸透せず、世間の関心もやや冷めたものになってしまったように感じます。大阪府や政府によるPRも十分とは言えず、なぜ開催するのか、誰に何を見せたいのかといった根本的なメッセージが曖昧なままでは、賛同を得ることは難しいでしょう。


背景には、時代の変化もあると考えられます。現在の日本はすでに先進国としての地位を確立しており、技術面でも他国を「見習う」必要性がかつてほど強くありません。さらに、グローバル化の進展により、「外国=あこがれ」という価値観も薄れつつあります。こうした変化が、万博に対する期待感を生みにくくしているのかもしれません。


また、開催意義が十分に共有されていなかったことや、開催費用の増加、準備の遅れといったネガティブな要素が重なり、世論の盛り上がりをさらに妨げる結果となりました。とはいえ、無事に開幕を迎えられたのは、日本人の責任感や勤勉さが発揮された結果とも言えます。もっとも、これは他国のイベント(例:ブラジルのオリンピック)でも同様の状況があったため、日本特有のこととも言い切れませんが…


東京オリンピックのように、「始まってみれば盛り上がった」ということもあります。今回の大阪万博も、これから訪れる人々や報道の在り方によって、世間の関心が高まり、盛り上がりを見せる可能性は十分にあります。


せっかくの国際的なイベントです。今後の展開に期待しつつ、面白そうな情報が発信されれば、行ってみようかと思っています。これまでのPRの結果からチケットが取れないような事態は起きていないようですからね!

 

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著者・橘川徳生 プロフィール

中央大学経済学部を卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、1990年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わる。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案し。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングが好評を得ている。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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