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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

【PRコラム】何も語らない会見に意味はあるのか?─日テレの記者会見に思うこと



先日、TOKIOの国分太一さんがコンプライアンス違反を理由に全番組を降板し、大きな話題となりました。それに伴い日本テレビが緊急の記者会見を開いたのですが、その場で語られたのは、違反の詳細も、いつどこで起きたのかも、何も明かされないというものでした。


これに対して、「それならプレスリリースだけで良いのでは?」「記者会見を開く意味があるのか?」といった批判の声も多く聞かれました。確かに、記者会見というのは、本来であれば社会に向けて誤りを説明し、必要であれば謝罪をする場です。情報が全くないなら、記者の質問に応える価値も薄いという見方も理解できます。


しかし、私自身はPRの仕事をしている立場から、この会見は“とても良かった”と評価しています。

まず、ファンに対して誠実に「番組からの降板」をきちんと説明したこと。加えて、内容には一切踏み込まず、プライバシー保護を徹底したこと。この2点は、報道機関としての社会的責任をしっかりと果たしているという印象を強く与えました。


特に注目したいのは、「答えられない」という姿勢を一貫しながらも、記者からの質問を無視することなく丁寧に対応していたことです。話さないことを貫くのは、実は非常に勇気のいること。説明責任と個人の権利、そのバランスに悩む多くの企業広報の参考になる会見だったと思います。


背景には、フジテレビでの中居正広さん対応での失敗があるのかもしれません。その際には、被害女性に対する世間の過剰なバッシングが問題視されました。日本テレビは、その反省を活かし、過剰な憶測や二次被害を防ぐために、あえて「語らない」という選択をしたのだと思われます。


記者会見の意義は「すべてを明かすこと」にあるのではなく、「なぜ話せないのか」「今何が起きているのか」を、誠意を持って伝えることにあります。今回のケースは、コンプライアンス問題が起きた際の新たな広報のあり方を、社会に向けて提示したひとつの事例といえるのではないでしょうか。

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著者・橘川徳生 プロフィール

中央大学経済学部を卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、1990年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わる。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案し。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングが好評を得ている。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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