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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

【PRコラム】「協業」なのか「売込み」なのか

更新日:12 分前

 ~言葉ひとつで伝わり方が変わる~


最近、営業メールや営業電話で「協業のご提案です」「業務提携のお願いです」といった連絡をよく受けます。しかし、そのほとんどが実際には単なる売込みです。

メールの中身を読んでみると、「自社のサービスを御社でも販売してもらえないか」「自社の製品を使ってもらえないか」という内容が大半です。これでは「協業」でも「業務提携」でもなく、一方的な営業依頼にすぎません。

 

弊社はPR会社です。そのため、Web制作会社や動画制作会社、デザイン会社などから「協業しませんか」という提案をいただくことはよくあります。「PR活動と連携すれば、より効果的なプロモーションができる」「クライアントにより良いサービスを提供できる」という意図自体は理解できます。

確かに、PR会社と制作会社は親和性が高く、協業が成り立ちやすい業界です。しかしながら、協業とは本来“双方に利益がある関係”でなければ成立しないものです。

もしこちらがサービスを採用し、一緒に営業を行うことになれば、それは当然「協業」の一形態です。ですが、最初の段階で“協業”を名目にした売込みをされても、それはあくまで採用前の営業活動であって、協業とは呼べません。

 

多くの「協業提案」は、結局のところ「自社の商品を使ってほしい」「自社のサービスを売ってほしい」というお願いに過ぎません。こちら側のメリットが最初から提示されていない限り、それは協業ではなく売込みの延長線上です。

営業する側にとっては「新しい売上」が生まれますが、提案を受ける側にとっては「新しい手間」が増えるだけという構図になりがちです。PR会社のように、常にクライアント案件に追われている立場からすれば、“手間がかかるだけの協業”は、メリットがないのです。

協業を名乗る以上、少なくとも

  • 双方に利益がある提案

  • 互いのクライアントを紹介し合える関係性

  • または、資本・人材交流など長期的な視野のある連携


    が前提にあるべきです。

 

正直なところ、「協業したい」と言うからには、最初に“こちらが動きたくなる理由”を見せてもらわなければ、関係は始まりません。

それは、派手な「エサ」を提示するという意味ではなく、誠意を見せることです。たとえば、最初に「御社のサービスを弊社のお客様に提案したい」「この分野で一緒に成功事例を作りたい」と具体的に話してくれる企業には、自然と信頼が生まれます。

一方、「まずはお話だけでも」「御社のクライアントに紹介してもらえませんか」というアプローチでは、信頼どころか、むしろ警戒されてしまいます。

協業を名乗るなら、「自分たちは御社に何を提供できるのか」を先に提示すべきです。そうすれば、相手も「ではこちらも何ができるか考えよう」と思えるのです。

 

これまで多くの企業から協業提案をいただきましたが、実際に長く続いているのは、ごく少数の本当に信頼できる会社だけです。そこには、ビジネスとしての利益だけでなく、「お互いのサービスを高め合う姿勢」がありました。

協業や業務提携という言葉は、安易に使うべきではありません。それは単なる営業手段ではなく、“信頼の証”としての関係性を築く行為だからです。

はっきりと「営業です」「このサービスを一緒に提案できませんか」と言ってもらった方が、お互いに誤解もなく、時間の無駄にもなりません。“協業”を口にするなら、まずはその言葉に見合うだけの姿勢と覚悟が必要なのだと思います。

 

協業とは、営業の延長線ではなく、信頼関係の先に生まれる共同の仕組みです。相手に何を提供できるかを真摯に考え、互いに成長できる関係を築く――。それが、本来あるべきビジネスPRの第一歩ではないでしょうか。

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著者・橘川徳生 プロフィール

中央大学経済学部を卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、1990年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わる。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案し。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングが好評を得ている。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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