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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

【PRコラム】原子力発電のPRに思うこと(その8)

あまり語られない原子力最大の課題──「バックエンド」という現実


前回のコラムでは、原子力発電のPRがうまくいかない理由として、推進派のほうが「ストーリーを作りにくい」という構造的な問題があることをお話ししました。今回は、その話と深く関係しながらも、推進派・反対派のどちらからも十分に議論されていない重要なテーマについて取り上げたいと思います。

それが、原子力の「バックエンド」の問題です。

 

原子力のバックエンドとは、いわゆる「核のゴミ(放射性廃棄物)」の問題です。日本ではよく、「原子力発電はトイレのないマンションに例えられる」と言われます。つまり、発電という優れた機能はあるものの、最終的な出口である廃棄物処理の仕組みが確立していない、という意味です。

核のゴミには大きく二つの種類があります。一つは、使用済み核燃料から生じる「高レベル放射性廃棄物」、もう一つは、原子力発電所の運転や廃炉作業に伴って発生する、瓦礫、作業服や部品などの「低レベル放射性廃棄物」です。

 

政府は、高レベル放射性廃棄物について、使用済み核燃料を再処理し、その廃棄物をガラス固化体にして地中深くに処分する、という方針を示しています。しかし、再処理工場の稼働は何度も延期され、最終処分場についても、いまだに具体的な場所は決まっていません。

この状況は、推進派にとって非常に説明しづらい問題です。原子力発電所を建設し、電力を確保しても、最終的に出てくるゴミの行き先が決まっていない。そのため、この話題はどうしても避けられがちになります。

 

一方で、反対派にとっても、この問題は扱いづらいテーマです。なぜなら、すでに稼働してきた原子力発電所が存在し、単に発電所を止めたからといって、核のゴミが消えるわけではないからです。

反対派が原子力発電所の廃止を訴えても、「では、すでに存在する廃棄物をどうするのか?」という問いに対して、明確な処分プランを示せているわけではありません。

結果として、推進派も反対派も、このバックエンドの問題には深入りしない方が、それぞれの主張を進めやすい。そのため、この最も本質的な問題が、議論の中心から外れたままになっているのが現実です。

 

この問題が極めて重い理由は、高レベル放射性廃棄物の危険性が、非常に長期間にわたる点にあります。放射線レベルが自然界と同程度になるまで、数万年かかるとも言われています。

仮に2万年とすると、今から2万年前の人類は氷河期の時代で、洞窟の中で生活していました。その間に文明は大きく変わり、国家も制度も何度も姿を変えています。果たして人類は、これから先の2万年にわたり、責任をもって核のゴミを管理し続けることができるのでしょうか。正直なところ、それは誰にも分かりません。

 

だからといって、問題から目を背けるわけにはいきません。原子力発電は、人類が自ら選び、作り出してしまった技術です。である以上、人類の英知をもって管理し続けるしかない、というのもまた事実です。

私自身は、核のゴミの問題を考えると、原子力発電が「良いもの」だとは決して思いません。しかし同時に、すでに建設し、運転してきた以上、その責任から逃げることはできないとも考えています。

現在稼働している、あるいは稼働可能な原子力発電所が存在する限り、この問題は消えません。であれば、現実から目を背けるのではなく、責任を持って施設を管理し、可能な限り有効に活用しながら、バックエンド問題と向き合い続けるしかないのだと思います。

 

原子力発電を巡っては、安全性、コスト、立地、エネルギー政策など、さまざまな論点が語られます。しかし、あまり表に出てこないものの、最も根深く、最も重い問題は、このバックエンドの課題ではないでしょうか。

PRの観点から見ても、この問題を避け続ける限り、原子力に対する本当の理解や納得は得られません。不都合な現実であっても、正面から向き合い、どう管理し、どう責任を果たしていくのか。そこからしか、原子力を巡る議論は前に進まないように感じています。

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著者・橘川徳生 プロフィール

中央大学経済学部を卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、1990年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わる。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案し。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングが好評を得ている。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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