【PRコラム】東野圭吾さんの作品から考える「物語」のPR力
- 徳夫 橘川

- 8月14日
- 読了時間: 4分
先日、作家の東野圭吾さんが亡くなったというニュースが流れました。
私は東野さんの本を50冊以上は読んでいる大ファンなので、このニュースには本当に驚きました。
東野作品の魅力はいろいろありますが、その一つは理系出身ならではの発想だと思います。「ガリレオ」シリーズでは科学的なトリックを使いながら、それを難しく感じさせず、エンターテインメントとして面白く読ませてくれます。
一方、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』や「クスノキ」シリーズでは不思議な出来事を交えながら人と人とのつながりを描き、「ラプラスの魔女」シリーズでは科学と超常的とも思える現象を少しシリアスに描いています。
そして、私が東野作品の中で最も感動したのが『手紙』です。
犯罪を犯した加害者本人だけでなく、その家族が背負わなければならないものを描いた作品で、読んだ後にいろいろなことを考えさせられました。
東野作品には、事件の謎を解くことだけを目的とするのではなく、被害者や加害者、その家族など、それぞれの立場から人間を描いた作品が数多くあります。
誰が正しくて誰が間違っていると簡単には割り切れない、人間の弱さや矛盾、そしてそれでも生きていかなければならない人たちの姿が描かれていて、読むたびに考えさせられます。
ミステリーとして面白いだけでなく、その奥に人間というものを深く考えさせるテーマがあることも、私が東野作品を読み続けてきた理由なのだと思います。
また、私にとって特に親しみがあるのが、加賀恭一郎を主人公とする「新参者」です。舞台が弊社のある日本橋人形町だったため、ドラマの撮影を何度か目撃したこともあり、とても身近に感じた作品です。
加賀恭一郎も、単に事件を解決する名探偵ではなく、人間味がありながら鋭い観察眼を持った魅力的な人物です。
東野さんの作品は、数多く映画化、テレビドラマ化されています。
小説を読んでから映像作品を見ると、自分が想像していた世界との違いに違和感を覚えることもありますが、東野作品は比較的原作の世界観を大切にしているものが多いように感じます。
そして、ここから少しPRの話になります。
小説が映画やドラマになれば、それまで作品を知らなかった多くの人にも、その作品が描いている世界を知ってもらうことができます。つまり、小説や映像作品という「物語」は、大きなPRの力を持っているということです。
例えば、「ガリレオ」を読んだりドラマを見たりして、「物理学者って格好いい」と感じ、物理学に興味を持った若者がいるかもしれません。東野さんはスノーボードを題材にした作品も書いていますが、それを読んでスノーボードの魅力を知った人もいるでしょう。
「物理学は面白い」「スノーボードは楽しい」と直接説明するより、面白い物語の中でその世界に触れた方が、自然に興味を持ってもらえることがあります。
これはPRにとって、とても重要なことだと思います。
ただ、「PRしたいから小説を作ろう」と考えても、そう簡単にはいきません。まず作品そのものが面白くなければ読んでもらえませんし、映画化やドラマ化にもつながりません。
PRありきで物語を作るのではなく、まずコンテンツとして面白い。その結果として多くの人に届き、そこに描かれた世界にも興味を持ってもらえる。
そういう意味でも、科学からスポーツ、そして人間の弱さや社会が抱える難しい問題までを魅力的な物語として描き、多くの人に届けてきた東野圭吾さんは、やはり一流の作家だったのだと改めて感じます。
今回の訃報は、私にとって本当に悲しい知らせでした。68歳であれば、まだまだ新しい作品を読むことができると思っていただけに、もう新作を読めないことが残念でなりません。
PRとは、「知らなかったことを知ってもらうこと」「新しいことに気づいてもらうこと」でもあります。
東野さんの作品は、知らなかった世界を知るだけでなく、自分とは違う立場の人の人生や気持ちについて考える「気づき」も与えてくれました。
そう考えると、「物語が人に何かを伝える力」は、PRにも通じるものがあるのかもしれません。
これまで数多くの素晴らしい作品を世に送り出していただき、本当にありがとうございました。
一人のファンとして心より感謝するとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします。


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