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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

【PRコラム】公約は「守ればいい」のか

8月31日
読了時間: 4分

 消費税減税から考える政治のPR


高市内閣は今月、飲食料品にかかる消費税率を引き下げる方針を決定しました。

これは昨年の衆議院議員選挙で掲げた、食料品の消費税負担を軽減するという公約を実現するための政策です。

選挙で公約を掲げ、その選挙に勝利したのですから、公約の実現に向けて動くこと自体は当然のことだと思います。

 

ところが、今回の政策に対しては野党やメディアから多くの疑問が投げかけられています。

昨年の選挙では、与野党の多くが消費税の減税や廃止を公約に掲げていました。それにもかかわらず、政府が実際に税率を引き下げようとすると反対意見が出てくるのですから、「では選挙の時に掲げていた公約は何だったのか」と思ってしまいます。

 

今回の報道を見ていて気になるのは、消費税率の引き下げを「選挙公約の実現にこだわる高市総理」という、比較的分かりやすい構図で捉えていることです。

確かに、ニュースとしてはその方が伝わりやすいでしょう。

しかし、本来議論しなければならないのは、「公約を守るか、守らないか」だけではないはずです。

消費税率を下げれば、その分だけ商品の税込価格を引き下げる効果が期待できます。その意味では、物価を下げるための非常に分かりやすい政策です。

ただ、経済はそれほど単純ではありません。

消費税率を下げることで一時的に物価負担が軽減されたとしても、そのための財源をどうするのかという問題が生じます。

財政への懸念が強まれば円安や金利などに影響する可能性もあり、それが再び物価に跳ね返ってくることも考えなければなりません。

さまざまな要素が複雑に絡み合っているのが経済ですから、「消費税を下げれば物価高対策になる」と単純に結論づけることはできないと思います。

 

もう一つ、野党などから指摘されている「2年後に本当に税率を元に戻せるのか」という問題もあります。

一度下げた税率を上げるとなれば、当然、国民から反発が起こるでしょう。

政治家にとって選挙を考えれば、「消費税を下げます」と言うことは比較的簡単ですが、「消費税を上げます」と言うことは非常に難しいものです。

そう考えると、2年間の時限措置として始めたものが、本当に予定通り終了できるのかという疑問が残ります。

さらに長期的に考えれば、少子高齢化が進み、社会保障費などが増えていく日本で、消費税収を大きく減らしたまま財政を維持できるのかという議論も避けて通れません。

だからこそ、本来は「今、物価を下げるためにどうするか」だけではなく、5年後、10年後の日本経済や財政まで考えて議論する必要があります。

 

もちろん、政治家が選挙公約を守ることは重要です。

しかし、選挙の時と経済状況や国際情勢が変わったのであれば、公約を修正することがあってもいいと思います。

その場合は、「なぜ変更するのか」を国民にきちんと説明すればいいのです。

反対に、公約を実行するのであれば、「選挙で約束したから」だけではなく、現在の経済状況でもなぜこの政策が必要なのか、その財源をどうするのか、2年後にどうするのかまで説明する必要があります。

野党についても同じです。

自分たちも選挙で消費税減税を掲げていたのであれば、政府案に反対するだけではなく、「自分たちの減税策とは何が違うのか」「今でも減税が必要だと考えているのか」を説明してもらいたいと思います。

 

ここにPRの難しさがあります。

PRでは、難しいことを分かりやすく伝えることが重要ですが、「分かりやすく伝えること」と「複雑な問題を単純化すること」は違います。

「物価が高いから消費税を下げる」「選挙で約束したから実行する」という説明は分かりやすいものの、それだけで日本経済や財政の問題を語ることはできません。

政治家には、選挙で支持を得るための公約ではなく、将来の日本を見据えた政策を示してもらいたいと思います。そしてメディアにも、単純な賛成・反対の構図にするのではなく、その政策のメリットとデメリットを国民に分かりやすく伝える役割があります。

選挙に勝つための公約ではなく、日本の将来のための公約を。

複雑な問題を単純化せず、それでも国民に分かりやすく伝え、納得してもらうこと。それこそが政治に求められるPRなのではないでしょうか。

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著者・橘川徳生 プロフィール

中央大学経済学部を卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、1990年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わる。

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落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案し。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングが好評を得ている。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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