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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

【PRコラム】原子力PRはどうすればいいのか

6月10日
読了時間: 5分

~あえて「自分ならこうする」という提言~


原子力のPRについては、4月15日のコラムで一応の区切りをつけたつもりでした。

しかし振り返ってみると、一般論に終始してしまい、「ではどうすればいいのか」という具体的な提案がほとんど書けていなかったように感じます。

そこで今回は、もし自分が原子力のPRを任されたらどうするかという視点で、あえて具体的な企画として整理してみました。もちろん、実現可能性や関係者の合意などは一切考慮していない“仮説の提案”です。

 

①「安全性の議論」からあえて離れる

まず大前提として、安全性をいくら訴えても100%の理解は得られないという現実があります。

特に日本は地震大国であり、「絶対安全」という言葉はどうしても疑念を持たれてしまいます。この土俵で議論を続けても、PRとしては限界があります。

そこで発想を変えます。

原子力発電を続ける理由を「安全だから」ではなく、「安全性を高め続けるために必要だから」と位置づけるのです。

原子力をやめれば、技術者は減り、研究も衰退し、結果として安全性を高める力そのものが失われていきます。

実際、日本の大学でも原子力分野の人気は低下しています。

つまり、原子力を維持すること自体が安全性の維持につながるというストーリーでPRを展開するという考え方です。

 

②世代別にメッセージを分ける

原子力の問題は、世代によって関心や価値観が大きく異なります。

そのため、ターゲットごとにメッセージを明確に分ける必要があります。

■若い世代向け

・電気のない社会の不便さ・デジタル社会を支える電力の重要性・地球温暖化とCO₂削減の必要性

これらを軸に、「自分たちの未来を守るためのエネルギー」として原子力を位置づけます。

再生可能エネルギーが理想であることは前提としつつ、現実として電力需要に追いついていないことも含めて、「過渡期の現実解」としての原子力を伝えていく必要があります。

■中高年層向け

こちらはより現実的な視点です。

・エネルギー安全保障・資源のない日本の現実・国力維持という観点

例えば。現在の中東情勢などの不安定さを踏まえ、「輸入に頼るリスク」を軸に訴求します。

感情ではなく、国家としての持続性・安定性に焦点を当てる方が響きやすい層です。

 

③イメージ戦略を軸にする

原子力はどうしても難しく、関心を持たれにくいテーマです。理論で押しても限界があります。

そこで必要なのが、イメージ戦略です。

■中高年層:タレント起用

信頼感・安心感のある人物を起用します。例えば(あくまでイメージ案ですが)

  • 阿部寛 

  • 天海祐希 

  • 内村光良 

など、「信頼」「誠実」「知的」といったイメージを持つ人物です。

テレビCMなどを通じて、難しい話ではなく「必要なものとしての認識」を自然に浸透させることが狙いです。

■若年層:コンテンツ化(アニメ・ゲーム)

若い世代には、説明ではなく体験や感情に訴える理解が有効です。

・エネルギー問題をテーマにしたアニメ・電力・技術を題材にしたゲーム

といったコンテンツを通じて、単に知識として理解させるのではなく、

「原子力発電に関わること=社会を支えるかっこいい仕事」

というイメージを醸成することが重要です。

例えば、最先端技術に携わるエンジニア、社会インフラを守るプロフェッショナル、危機を未然に防ぐスペシャリストなど、ヒーロー性や使命感を持ったキャラクターを描くことで、若い世代にとっての憧れの対象として認識される可能性があります。

ポイントは、PR色を前面に出すのではなく、純粋に面白い作品として成立させることです。

その結果として、「気づけば原子力やエネルギーに興味を持っていた」という状態をつくることが、最も自然で効果的なアプローチになると考えます。

 

④全国規模での統一PR

現在、日本の電力会社は地域ごとに分かれているため、PRもバラバラになりがちです。

しかし、原子力は本来、国全体のエネルギー政策の問題です。

そのため、

・国・電力会社・関連団体

が連携した全国統一のPR戦略が必要になります。

特に重要なのは、地方だけでなく都市部の理解を得ることです。

立地地域だけでなく、電力を消費する側の意識を変えなければ、本質的な支持は広がりません。

 

ここまでいくつかのPR案を挙げてきましたが、正直なところ、これを実行したとしても、すぐに賛成が増えるとは思っていません。

それだけ原子力の問題は複雑であり、簡単に結論が出るテーマではないからです。

また、私は原子力の関係者でもなく、あくまで一個人としての提案に過ぎません。予算や現実性を考えれば、実現は難しい部分も多いでしょう。

ただ一つ重要だと感じているのは、国や電力会社が一方的に「こうあるべきだ」と主張するのではなく、国民に寄り添った形での発信が不可欠であるという点です。

そしてもう一つ、PRの本質についても改めて考える必要があります。

PRとは単に理解してもらうことでも、納得してもらうことだけでもなく、まずは「気付きを与えること」、そして「知らないことを知ってもらうこと」から始まります。

このブログでも、原子力の安全性やエネルギー事情など、さまざまな論点について書いてきましたが、正直なところ、それらを十分に理解している人、あるいは問題意識を持っている人は、ごくわずかではないでしょうか。

そうした状況の中で、十分な情報や理解がないまま「賛成か反対か」を求めても、難しいのは当然です。

一方で、詳しいことは知らなくても「何となく必要なのではないか」と感じている人がいるのも事実です。それはPRの観点から見れば、決して悪いことではなく、むしろ可能性のある状態とも言えます。

であればこそ、結論を急ぐのではなく、まずは知ってもらい、気づいてもらう機会を増やしていくこと。その積み重ねが、やがて理解や納得につながっていくのだと思います。

原子力のPRは簡単ではありませんが、地道に続けていくことでしか道は開けない――今回の検討を通じて、改めてそう感じました。

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著者・橘川徳生 プロフィール

中央大学経済学部を卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、1990年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わる。

​

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案し。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングが好評を得ている。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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