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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

【PRコラム】スポーツ新聞の価値、見落としていませんか?

更新日:6月20日


かつて通勤電車の中で、折りたたんだスポーツ新聞を器用に読み込むサラリーマンの姿は、どこか日常の風景の一部でした。私自身も、入社当時はその一人。朝の満員電車でスポーツ新聞を開き、野球の結果や芸能ニュースに目を通すのが日課でした。


しかし今、そんな光景はめっきり見かけなくなりました。スマートフォンが登場して以降、新聞の発行部数は減少を続け、ついには廃刊となったスポーツ紙も出てきています。


この背景には、スマホの普及とともに進んだ「スポーツの多様化」があると感じています。私が子どもの頃、「スポーツ」といえばほとんどが野球一色。テレビも新聞も、話題の中心はプロ野球でした。しかし現在では、サッカーやバスケットボール、バレーボール、ラグビー、陸上、水泳、さらにはスケボーやダンスと、競技は実に多様になり、それぞれに熱狂的なファンが存在します。


こうなると、限られた紙面にすべてのスポーツ情報を盛り込むことは難しく、読者も自分の“推し”スポーツの最新情報をスマホでダイレクトに得るようになります。結果、スポーツ新聞は次第に選ばれなくなっていったのです。


それでも、私は「スポーツ新聞はまだまだPRに活用できる媒体」だと信じています。実際、クライアントによっては「スポーツ紙に載せるのはちょっと…」と敬遠する方もいますが、PR的に効果的な戦略はあります。


例えば、芸能人を起用したイベントを企画すれば、スポーツ紙の記者に取材してもらえる可能性が高くなります。取材された記事はそのままネット版に掲載され、Yahoo!ニュースに転載されるケースもあります。うまくいけばYahoo!トップページに載ることすらある。つまり、スポーツ新聞に取り上げられることが、デジタルメディアへの波及効果を生む起点にもなり得るのです。


時代の流れによるメディアの変化は避けられないものではありますが、それでもスポーツ新聞という媒体が持つ“文化的価値”には、どこか温もりを感じてしまいます。おじさん世代にとって、駅の売店で売られている“あのページ”をドキドキしながら覗くような、ちょっとした背伸びの思い出も、忘れられない要素なのです。

もしかすると、こうした「おじさんの好きなもの」は時代とともに姿を消していく運命なのかもしれません。でも、だからこそ、変化の中にある価値を見出し、活用していく。それがPRの役割なのだと思います。

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著者・橘川徳生 プロフィール

中央大学経済学部を卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、1990年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わる。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案し。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングが好評を得ている。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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