【PRコラム】衆議院選挙の圧勝に見る「推し活政治」とPRの変化
- 徳夫 橘川

- 23 時間前
- 読了時間: 4分
このコラムでは政治を取り上げることが少なくありません。
ただ、政治は立場や価値観によって意見が大きく分かれるテーマですので、本来はあまり踏み込みたくない分野でもあります。
それでも今回の衆議院議員選挙の結果は、PRの観点から見て非常に示唆に富んでいると感じましたので、私なりの視点で整理してみたいと思います。
今回の選挙は、高市総理が「私が総理大臣でいいのかを問う選挙」として衆議院を解散したことから始まりました。
1月の解散については、予算審議が滞るのではないか、雪の季節や受験シーズンと重なるのではないかといった懸念もありましたが、高市総理は自らの人気を背景に解散に踏み切ったように見えました。
選挙戦の中盤には、新聞各社が「自民党圧勝予測」を報じました。
通常であれば、こうした報道は逆風となり、多少の失速を招くこともあります。しかし今回はその予測を覆すことなく、最後まで自民党は勢いを保ち、結果として単独で3分の2を超える議席を獲得する圧勝となりました。
テレビのコメンテーターやジャーナリストは、その役割上、政府に対して批判的な視点を持つことが多く、高市総理の問題点を追及する報道も少なくありませんでした。
しかし興味深いのは、その批判が支持の減退につながるどころか、かえってSNS上での高市支持を強化する結果になったのではないかという点です。
テレビでの厳しい発言や否定的なコメントが切り取られ、「またマスコミが批判している」「既存メディアは高市総理を認めたくないのではないか」といった文脈でSNS上に拡散され、その結果、支持者の間では「応援しなければ」という心理が働き、いわば“逆バネ効果”のような現象が起きたように見えます。
従来であれば、マスメディアの批判は世論形成に一定の影響力を持っていました。
しかし今は、その批判自体がSNSのコンテンツとなり、支持を強化する“燃料”になってしまう構造があるのです。
今回の選挙で何が投票行動を左右したのか。私が感じたのは、SNSを通じた「推し活」の力です。
高市総理は、具体的な政策論争よりも、「自分が引き続き日本をリードするのがよいのか」という問いかけを前面に出しました。それは政策の是非を問うというよりも、「高市早苗という政治家」を支持するかどうかを問う構図だったように思います。
昨年の総裁選から連立政権の形成に至る過程を振り返ると、停滞感のあった日本政治が一気に動き出した印象を与えました。「この人なら何かを変えてくれるのではないか」「多少の反対があっても政策を実行してくれそうだ」そうしたイメージが支持の背景にあったのではないでしょうか。
さらに、高市総理に代わる明確なリーダー像が与野党ともに見えなかったことも、「ここで交代すればまた停滞するのではないか」という心理を働かせた可能性があります。
選挙後、高市総理は「日本を二分する問題を解決する」と抱負を述べました。しかし選挙期間中、その「日本を二分する問題」が何を指すのかが、明確に報道されていた印象はあまりありません。
それでも圧勝したのは、政策の詳細よりも「人物そのものへの期待」が勝った選挙だったとも言えます。
今回の勝利は、高市人気がSNS上で「推し活」として拡散され、それが実際の投票行動につながった結果ではないでしょうか。そして、それに対抗する野党側が支持を広げるどころか、不信感を払拭できなかったことも、自民党の大勝を後押ししたと考えられます。
(野党の敗因については、次回に触れたいと思います。)
PRの観点から見ると、今回の選挙は象徴的です。従来のテレビや新聞などの「オールドメディア」(私はこの言い方をあまり好みませんが)による批判的報道よりも、SNSを通じた支持の拡散のほうが、実際の支持を集める力を持ったことを示したように思えます。
言い方は強いかもしれませんが、今回に限って言えば、オールドメディアはSNSに主導権を奪われたと言ってもよいのかもしれません。
今後の選挙でも、この傾向は続く可能性があります。
政策の細かな是非よりも、「立つキャラクター」「共感できる人物像」が前面に出る選挙。
いわば“推される政治家”が強い時代です。
これは政治だけの話ではありません。企業のPRにおいても、正攻法の論理的説明だけでは届かない場面が増えています。
どれだけ理屈が正しくても、どれだけデータが揃っていても、共感や物語がなければ、人は動かないのです。
今回の選挙結果は、そのことを改めて示した出来事でした。
PRはますます難しい時代に入っています。しかし同時に、「人がどう動くのか」という本質を考え直すきっかけでもあります。
政治もPRも、情報戦の時代から“共感戦”の時代へ。今回の選挙は、その転換点を象徴しているように感じました。





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