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無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

【PRコラム】メディアの地殻変動とPRのこれから


ひと昔前まで「テレビに出る=影響力がある」という図式が当たり前でした。企業や著名人がテレビに登場すれば、その反響は絶大で、売上や知名度に直結するものでした。しかし、いまやその前提は崩れつつあります。


テレビの視聴率は年々下降傾向にあり、雑誌は休刊や廃刊が相次ぎ、発行部数はピーク時の半分以下。新聞もまた部数減が止まりません。長年メディアの王座に君臨してきたテレビも、WEBメディアやSNSの台頭により、影響力の面では徐々に後退しています。


昨年の選挙報道でも、テレビの報道姿勢に疑問を呈する声がSNSで拡散され、テレビ報道そのものへの信頼が揺らぎました。さらに、あるテレビ局での人権意識の欠如が問題視されるなど、メディアの倫理観にも厳しい目が向けられています。


一方で、スマートフォンを手にした若い世代は、もはやテレビや新聞を見ることすらありません。情報源はもっぱらSNSやYouTubeなどのWEB上にあり、それが真実かどうかを深く考えることも少ないようです。この「情報の受け手の変化」は、PRに関わる私たちにとって、無視できない大きな課題です。


もちろん、オールドメディア=悪という話ではありません。テレビや新聞、雑誌には、情報の裏付けを取り、編集責任を持って発信するという大切な役割があります。SNSでは拡散力こそあれ、裏付けのない情報が感情的に広がっていくリスクもあります。


だからこそ、これからのPRでは、メディアの特性をよく理解し、戦略的に使い分けていく必要があります。テレビや新聞は信頼性という強みを生かし、SNSは即時性と拡散力をうまく活用する。その上で、メディアリテラシーを高める啓発や、フェイク情報への一定の規制も議論していくべきでしょう。


ラジオがいまだに根強いファンを持つように、テレビや新聞、雑誌も形を変えながら生き残っていくはずです。大切なのは、それぞれのメディアが自分たちの「らしさ」を再定義し、信頼を取り戻す努力を続けること。そして私たちPRの立場からも、その変化に寄り添いながら、情報の伝え方を進化させていくことだと思います。

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著者・橘川徳生 プロフィール

中央大学経済学部を卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、1990年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わる。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案し。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングが好評を得ている。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

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