top of page

無知の玉手箱
~知らないから始まるマーケティング~

【PRコラム】PRなき選挙戦略の末路~政治に必要なのは「伝える力」~


先日行われた参議院議員選挙では、与党(自民・公明)が過半数割れとなり、国民民主党や参政党が大きく議席を伸ばすという結果になりました。これまでの政党に対する不信感や、変化を求める有権者の声が背景にあることは間違いありません。

 

以前このブログでも「選挙ではPRが重要」であるという話をしました(過去記事(オールドメディア vs. SNS?選挙PRのいま )はこちら)。選挙は、候補者や政党が「自分たちが何者で、どんな未来を描こうとしているのか」を有権者に知ってもらうための“広報の場”です。つまりPRそのものなのです。

有権者が投票を決める要素には、大きく以下のようなものがあると思います。

  1. どの政党に所属しているか

  2. 政策の中身

  3. 将来ビジョン・価値観

  4. 候補者の人柄

  5. 知人・家族などの推薦

この中で、何を重視するかは人それぞれですが、どれも「伝える努力」がなければ、有権者に届くことはありません。

 

今年の都知事選に出馬した石丸氏が立ち上げた新党「再生の道」は、その点において大きな課題を抱えていたように思います。特に、都議選で「党として政策は掲げない。候補者に任せる」とした方針は、多くの都民にとって“判断材料がない政党”という印象を与えてしまったのではないでしょうか。

 

結果として候補者全員が落選し、その後の「やむをえない」とのコメントには、リーダーとしての責任感や反省の色が見えず、困惑した関係者も多かったと思います。リーダーシップや姿勢は、政党の顔そのものであり、PRにおいても極めて重要です。

 

今回の参議院選では公約として「教育の質を高める」と掲げたものの、結果は議席ゼロでした。都議選での対応が影を落としたことは否定できません。また、SNSを軸に拡散してきた石丸氏のスタイルも、新党結成後は自らが批判の対象となり、ネガティブな印象を打ち消せなかった点で、PR的にも大きな誤算だったと言えるでしょう。

 

最近の選挙PRでは、X(旧Twitter)だけでなく、YouTubeを中心とした動画コンテンツの活用も目立ちます。映像の力は強く、メッセージを直感的に届けることができますが、一方で感情的・過激な表現が注目を集めやすく、対立や誤解を招くことも少なくありません。情報の伝達手段が多様化する今だからこそ、「どう伝えるか」だけでなく「何を伝えるか」がより問われています。

政治の世界でも、信頼を得るためには「政策」「人物」「考え方」を誠実に、そして継続的に伝えることが何より大切です。逆に、伝える力を軽んじたとき、有権者は「選ぶ理由」を見失ってしまいます。

 

私たちが選挙を通じて求めているのは、「伝わる政治」です。PRが政治の透明性を高め、日本の民主主義を一歩進める手段であることを、改めて感じさせられた選挙でした。

そして最後に願うのは、SNSや動画での発信ばかりに偏るのではなく、選挙で選ばれた議員たちが、国会という公の場で、しっかりと論戦を重ねていってほしいということです。言葉の力は、SNSの短文や動画の編集に頼るだけでなく、議論の中でこそ本領を発揮するものだと思います。

最新記事

すべて表示
【PRコラム】衆議院選挙の圧勝に見る「推し活政治」とPRの変化

このコラムでは政治を取り上げることが少なくありません。 ただ、政治は立場や価値観によって意見が大きく分かれるテーマですので、本来はあまり踏み込みたくない分野でもあります。 それでも今回の衆議院議員選挙の結果は、PRの観点から見て非常に示唆に富んでいると感じましたので、私なりの視点で整理してみたいと思います。   今回の選挙は、高市総理が「私が総理大臣でいいのかを問う選挙」として衆議院を解散したこと

 
 
 
【PRコラム】原子力発電のPRに思うこと(その8)

あまり語られない原子力最大の課題──「バックエンド」という現実 前回のコラムでは、原子力発電のPRがうまくいかない理由として、推進派のほうが「ストーリーを作りにくい」という構造的な問題があることをお話ししました。今回は、その話と深く関係しながらも、推進派・反対派のどちらからも十分に議論されていない重要なテーマについて取り上げたいと思います。 それが、原子力の「バックエンド」の問題です。   原子力

 
 
 
【PRコラム】落語は「演じる」だけじゃない──プロデュースするという楽しみ

「落語研究会出身です」と言うと、決まって「じゃあ一席やってよ」とか「ここで〇〇とかけて一つ」などと言われることがあります。 ですが、落語研究会はあくまでアマチュアです。卒業してからまともに稽古をしているわけでもありませんし、突然落語ができるはずがありません。仮に「ではやりましょう」と言ったとして、下手な落語を20分も黙って聴いてくれるのかと考えると、それはそれではなはだ疑問です。そもそも、きちんと

 
 
 

コメント


著者・橘川徳生 プロフィール

中央大学経済学部を卒業。大学時代は、落語研究会に所属するほどの話好き(うるさいというのが周りの評価?)。座右の銘は「無知の知」。大学卒業後、電力会社や生命保険会社での勤務を経て、1990年ウインダムに入社。過去の様々な業務経験を活かして、PR業務に携わる。

落語研究会で養った自由な発想をもとに、様々なPRやマーケティング企画を立案し。業務を通して蓄積した広範な業務知識をベースに、独自のPRコンサルティングが好評を得ている。趣味はランニングと読書。本から新たな知識を見つけたり、ランニング中にアイデアを思い浮かべる。

bottom of page